老害にならないうちに。
毎週のようにコラムを書かせてもらっているサイトがある。Over40のように自由に書くというものではなく、ちゃんとその会社の業種にそったテーマがあり、技術的に間違ったことを書かないように監修者もついている。ただ、この監修をしている方がかなりの高齢で、しかもわがままでプライドが高くて、人の言うことを一切聞かないのである。
で、編集長的な立場の会社の次期社長と、僕と、監修の爺さんで、ここ数年やってきたのだが、大体半年に一度くらい、爺さんが暴れる。暴れるきっかけは、大体、僕の文章である。この爺さん、とてもタチが悪いんだが、仮想敵を作ろうとするのだ。で、編集長的次期社長は若手男子で、自分にお金を払ってくれている、いわば専門家仲間なのである。だから、かわいい。で、僕はと言えば、専門的な内容をできるだけわかりやすく、親しみやすく書くのが仕事だ。
例えば、こういうところにも私たちの技術が使われているんですよ、という文章を書くのだが、僕としてはできるだけわかりやすく書きたい。なので、「ほら、恋人同士が手をデートの最中に手をつなぐでしょ。あの時の、手と手が触れ合う時にも電気信号が流れて、お互いがビビッと気持ちを交換してるわけですよ」なんて書き方をする。するってえと、お爺が怒る。まあ、それはそれで面白いんですが、だんだん、お爺は僕のことを敵だと認識してきて、ことあるごとに嫌味なことをメールの文面に書くわけですよ。
「私は、この業界の勉強のために先日の展示会にも足を伸ばしましたが、uematsuさんも行きましたか?」と行ってないことを承知で聞いてきたりする。あと、じゃあ、それで行きましょうと書けばいいのに、「uematsuさんの言い回しベストだとは思いませんが、編集長がOKならいいんじゃないでしょうか」とか書いてくる。まあ、このお爺の相手も仕事だと思って数年我慢してきたんですが、ここへきて、お爺さんの老害が偉くパワーアップしてきた!
ついに、キャッチコピーにまで口を出すようになり、編集長が「そこはuematsuさんに任せていますので」「私はuematsuさんのタイトルが親しみやすくていいと思うんですが」と言っても、「まあ、編集長が言うなら、それで」と爺さん、ずっとぷんぷん丸なんだよね。
でも、最近、お爺さん、ついに「もうネタがない」と言い出した。でも、今までに書いたものだって、そんなに多くのビューを稼いでいるわけでもないので、ちょいと既出のネタをリライトしようということになった。これだと、お爺にチェックしてもらうタイミングも減るし、一旦チェックしたものなので、こっちも気持ちが楽。ということで、編集長と今までにつかったテーマをリライトして使い回すことになったのです。
すると、お爺、もうチェックするところがないから、今度は「これは内容が以前のものと全く同じだ」と怒り出した。「いえ、先生、ちゃんと導入と締めを変えて、技術的な解説部分もコピペじゃなくリライトしてるんですよ」と伝えると「同じ内容だったら、単なる書き換えだ!」とメールで怒鳴っておられる。メールなのに湯気が上がってるのがわかるって、すごいね。
「私は、今回のuematsuさんの主張を認めません。これを編集長が認めても、私が監修済みとは認めません!」ときた。う〜ん、今、ここ。で、若き編集長と電話で話して「じゃまくせ〜」~と同時に叫び、「どうしたもんかねえ」と一緒に悩み、善後策を考えている、のである。
老害ってものの根本的な部分て、結局、これがビジネスで、しかも若き編集長が全ての決定権を持っているということを忘れているってことですよね。で、そもそも、自分が「もうネタが出せないから勘弁して」と言ったことをすっかり忘れている、というところ。
これ、正直、解決策はもうわかっているんです。直接会って、打ち合わせをして、もう監修とかやめて、このコラムもやめませんか、と話せばいい。そうすると、この爺さん、絶対に泣く。最初、怒って、途中から泣き出す。僕はこの爺さんと同じ思考回路の人を何人か知っているんだが、大体、最後、泣く。そして、なんでみんな自分のことしか考えないんだ的なことを言い出す。
ああ、どうしたもんかねえ。ということで、今週末、僕は若き編集長と対応策を打ち合わせるのである。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。