図書館でいちばん少数派なのは本を読む人。
最近、よく近所の図書館に行く。比較的新しい設計の図書館で窓がとても広々していて気持ちがいい。自習室や調べ物をする部屋もあり、子どもたちを集めてトークショーやワークショップが開催できるホールも用意されている。
僕自身は仕事をしに行くことが多く、パソコンの使用が許されている部屋があるので、そこをネットで予約して使う。パソコンが使用できるということで、その部屋でも僕と同じように仕事をしている人が多い。ひたすら数字を集計している人もいれば、書棚から持ってきた本をキーボードを叩いて記述している人もいる。
自習室はパソコンが使えないのでもっぱら学生たちが勉強に使用している。それ以外にもあちらこちらにテーブルと椅子が置いてあり、休日のお昼近くになると席がうまってしまうくらいの人気だ。しかし、そのテーブルを見てもみんな勉強や仕事をしている人たちばかりで、図書館だと言うのに本を読んでいる人がほとんどいない。では、本を読む人たちはどこにいるのかというと、テーブルのない、少しがっしりとした椅子があちこちに置いてあり、そこに腰掛けているのだった。しかし、よく見ると、そこでも本を読んでいるよりもスマホを見ている人のほうが多いかもしれない。やっぱり本を読んでいる人は少数派だ。
僕だって、仕事をする場所として、ここはいいなあ、と使っているわけだし、逆に本を読まないから来ないで!ということになると、図書館の存在理由がなくなってしまう時代なのかもしれない。かつての僕たちのように、学校の図書室の本を右から左まで全部読んでやろう!と無謀なことを考えていた子どもや、自分と同じ本を借りたあの女の子とは運命の糸で結ばれているのかも!なんて舞い上がるような子どもはいまもいるのだろうか。
いるんだろうなあ。いや、きっといる。いるけど、見えにくんでしょうね。だって、本の裏表紙に挟んであった図書貸し出しカードもいまはないから。あれがあると、人気のある本とか、同じ人が何回も借りてる本がわかって、なんとなく本にも人とのつながりがあるような気がしていたのだった。
個人情報を大切にしなきゃいけない時代なので、ないものねだりなのだろうが、なんとなく本好きが繋がる場所としての図書館がこれからも残っていけるような工夫はないものか、と考えたりするのだった。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。