映画館でアナウンスできるなら
フリーランスで仕事をし始めると、時間が自由になるので平日に映画館に行きやすい。おまけに、シニア料金になってからは割安なのでなおのこと映画館に行く回数が増えた。最近では映画館の上映スケジュールにそって、仕事もスケジュールを考えたりする始末。朝一番で「午前十時の映画祭で『ベルリン・天使の詩』を見てから、近くのスタバであのコピーを直して、そのあと移動して濱口竜介監督も新作を見よう」という感じだ。
映画館に足蹴く通うようになって少し気になっているのは、上映前のアナウンスだ。ミニシアター系はその場で係の人が生でアナウンスする時もある。だいたい大きなところは、動画にしてあってそれを流すだけ、というところが多い。映画上映前のアナウンスと言えば、「座席を蹴らないで」「禁煙です」「お静かに」が定番だが、最近はそこに飲食系の注意が加わる。
飲食系のアナウンスは大手とミニシアターで違う。昔はみんな一緒で、「飲食の際は、ビニール音などにご注意ください」というのが多かった。でも、いまは大手は自分のところでポップコーンなどを売っていて、「持ち込み禁止」というのが増えた。まあ、確かに持ち込みされると売上が落ちるからアナウンスしたくなる気持ちもわかるが、鑑賞の注意ということで言えば、その飲食物が持ち込みかどうかよりも、音を立てるな、というほうが重要じゃないのかと思う。
ということで、もし自分でアナウンスできるなら、どんなアナウンスがいいのか考えてみた。
みなさま、本日は当劇場をご利用いただきありがとうございます。
ただいまより、予告編に続き本編を上映いたします。
当劇場は禁煙になっております。おタバコはご遠慮ください。
前の座席は蹴らないでください。
ちょっと当たっただけやん、という程度でも、
前の席にはかなり響き不快です。
ちょっとでも当たらないように足の組み替えの際にもご注意ください。
当劇場は持ち込みOKです。
お腹が減っている場合もあると思うので、飲食もOKにしております。
ただ、あまりシリアスな作品やエログロな作品を見ながら、
ポップコーンなどを美味しそうに食べている様子をみると、
なんでやねん、と突っ込みを入れてみたくなります。
あと、最近のポップコーンは昔のものと違って湿気ていることがありません。
特にキャラメルなどでコーティングしているものは、
食べる際にカリカリといい音がします。
アホみたいに口を開けて食べていると、かなり周囲に音が響いております。
子どものころ、「食べる時は口を閉じなさい」という教育を受けていないのだと思いますが、
まあ、みなさんもそろそろいい大人なので、口を閉じて食べてください。
私なんか、キャラメル味のポップコーンを食べるときは、口を閉じて、
口のなかで注意深く音を立てないようにゆっくり咀嚼します。
もちろん、ビニール音も迷惑です。
ビニールの中にいつまでも手を突っ込んでクシャクシャいわさないように。
あと、ビニールのパッケージを開けたり、
あめちゃんの包み紙をはがす場合は、
ちゃんとスクリーンをみて、ドアの開閉にあわせてはがすとか、
アクションシーンの音楽が派手めな時にはがすとか工夫してください。
わりとみんな、派手なシーンはそっちに目を奪われて、
ラブシーンで裸になったりして静かになったあたりで、
お菓子を食べたりしたくなるので、そのあたりご配慮ください。
えっと、それから…。
と、僕がアナウンスするとたぶん、映画が始まらないので、黙っておくことにします。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。