第107回 化け猫あんずちゃん
映画「化け猫あんずちゃん」は、いましろたかし原作、そして久野瑤子、山下敦弘のダブル監督作品だ。制作は老舗アニメーションスタジオのシンエイ動画。フランスのアニメーションスタジオMiyu Productionが共同制作している。
==
子猫のときにおしょーさんに拾われたあんずちゃんはいつしか人間の言葉を話し、いまや37歳の化け猫だ。池照町で按摩のアルバイトをしており、町に馴染んでいる。そこへ哲也とかりんの父娘がやってきて、かりんはしばらく祖父であるおしょーさんのところで過ごすことになるのだが…。
==
本作はロトスコープで制作されている。最近では朝ドラのオープニング映像でお馴染みの手法だ。ロトスコープの映像は、個々人の演技や動作に伴う身体のゆらぎを拾い、ただ立っているだけでも歩いているだけでも、生身感が面白い。
見入ったのが、按摩の施術を終えたあんずちゃんがスクーターのエンジンをかけて発進するところ、中頃ではあんずちゃんに賭けをもちかけられた貧乏神がうろうろするところ、そして最後の方でかりんが画面の奥から駆けてくるところだ。
主演の森山未來らをはじめ俳優陣が演技するのを実写撮影した映像からレイアウトを整理し、動き全てを置き換えるのではなく、選択的に取り出して作画しているという。漫画原作なので、キャラクターらはデフォルメが効いた漫画のフォルムだ。漫画がヌルっと人の動きをする瞬間に実在感が出て、なんともいえない妙味がある。
==
そのキャラクターらをさらに実在に近づけるのが、背景美術と色彩設計担当のMiyu Production。近いところでは「めくらやなぎと眠る女」に参加している。
原作漫画を(ためし読みでも)見てもらうと分かるのだが、モノクロで、決して複雑に描き込まれた絵ではない。しかし映画の池照町は柔らかで自然豊かで、気持ちがいい。深呼吸したくなる町だ。このマンガの背景がこれほどみずみずしく表されるなんて!と驚嘆する。美術監督・色彩設定を務めたJulian De Man(ジュリアン・ドゥ=マン)のセンスがきらいな人は、たぶんいないと思う。
最初かりんちゃんがとげとげしていて、あんずちゃんも見ている私も距離を足りづらかったのだが、最後はホッとする人情話なのだった。あ、猫情話か。しゃべる猫キャラは良いですね!
===
最近アニメスタジオがYouTubeで昔のアニメを期間限定配信していますね。例えばTMSアニメ公式チャンネルでは「ルパン三世」はもちろん「巨人の星」、「じゃりン子チエ」、「エースをねらえ!」など、もう懐かしさで胸がいっぱい…。 手塚プロダクション公式チャンネルでは「悟空の大冒険」が見られるのです!配信バンザイ!
そしてそして、楽しみ過ぎる今年の秋アニメ。「ONA的今季なに見る?」を10月あたまに公開準備中です!