牛と豚の革は繊維だけど、ワニの革は地層みたいになっている。
いきなり何の話しをしているのかと思われるだろうが、本当らしい。牛や豚の革は繊維状だから染料でも染まりやすい。そして、ワニなどの爬虫類の革は地層みたいになっているので、染料でも染まりにくいし、特殊な加工が必要になる。でも、その分、希少価値が高くなるし高度な技術も必要になる。だから、高値で取引されるし、非日常的な高級感を演出することが出来る。
という話しを最近、身近な人から聞いた。すると、不思議なことに昨日まで「これ高かったんだよ」と思っていた牛革の財布がとても日常的なものに見えてきてしまう。いや、なんとも愚かな感性である。
で、こんなに優柔不断だから、還暦を過ぎても物の見方が定まらないのだとため息を吐き、逆にこんなことに振り回されているからこそ、世の中が面白いのだと身勝手に思ったりもする。そして、いつものように、「不器用ですから」と高倉健のように生きている人はこんなふうに右往左往しないんだろうな、と物思いにふけるのである。
まあ、高倉健的な生き方が男らしいという考え方自体も、いまの世の中じゃ古くさいのだろうし、そもそも男らしいという感覚がすでに間違っているのかもしれない。ああ、だとしたら余計に「不器用ですから」と言葉少なにワニ革のベルトでもキュッと締めて、夜の町に繰り出すほうが変に勘違いもされずに生きていけるような気がしてきた。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。