オンライン会議、どうする?
これは前にも書いたし、書いたところでどうしようもない気がするんだけども、ここらでみなさんの肌感覚で、もう言っても無駄なのかどうかを教えてほしいのです。
喫茶店とか、コーヒーショップというところは、もともとコーヒーを味わうところですよね。で、コーヒーを味わいながら、ちょっとした会話をしたり、時には仕事の話をすることもある。そのあたりまでは、たぶん、みなさん同じご意見でしょう。違っている人がいたら申し訳ないけど。
だけど、携帯電話が一般的になってきたあたりから、喫茶店のなかで携帯で話す人が出てきた。これが不思議なもんで、知らない人が隣のテーブルで二人で話していても気にならないのに、一人で携帯で話していると「うるさないなあ、もう」と「もう」までつけて、うるさがってしまう。あれは、なんだろう。電話の向こうにこっちの知らない世界が広がっていて、なんだかこっちの雰囲気は放置で、勝手に話している感じが腹立つのだろうか。
ただ、携帯の場合はたぶんみんなが「うるさいなあ、もう」と思っていたらしく、しばらくするとテーブルや柱に『携帯電話のご使用はご遠慮ください』と書かれるようになった。こう書かれると、携帯で話していた人たちも、一応ルール違反なのか、と思ったのかなるべく外へ出て話したり、話すにしてもヒソヒソ話すようになった。
そんな腹の探り合いのような携帯事情が続いていたカフェ小景だが、コロナ禍を経て、爆発的に増えたのがオンライン会議だ。オンライン会議の便利なところは、ネットにさえつながればどこからでも参加出来る、ということ。で、世の中のほとんどの場所でネットにアクセスできるということは、事実上、どこをオフィスにして、いつオンライン会議に参加してもかまわないということになる。
けれど、実際、オンライン会議に参加するにはノートパソコンが必要になる。まあ、スマホでも参加出来るけれど、さすがに「資料を画面共有します」と言われると、資料の中身まで見えなくなるので、まあ、普通はノートパソコンで参加する。ただ、場所は自由だ。自由だけれど、普通、活発に意見を戦わすような場合は、個室が望ましい。自分の部屋とか、オフィスの片隅とか、シェアオフィスとか、最近流行のボックス型のレンタルデスクだとか。
ただ、場所にしばられないのがオンライン会議のいいところなのに、それだとある程度場所に縛られてしまう。僕もレンタルデスクとかを借りてオンライン会議に参加することはあるが、予約している時間よりも会議が長引いているのに、デスクの延長が出来なかったりすると、パソコンを抱えて公園のベンチで続きを、ということになりかねない。
となると、許されるのなら、喫茶店やコーヒーショップの片隅で、密やかにオンライン会議が出来るなら、それはなかなか快適だとは思う。やっているほうはね。だけど、同席させられるほうは携帯電話もイヤだったのに、オンライン会議が心地よいわけがない。ときには、社外秘みたいな内容も飛び交っているのだから、なんだかソワソワしてしまう。
店によっては、ちゃんと『オンライン会議などはご遠慮ください』と書かれている店もあるにはあるけど、携帯電話のときよりもみんな確信犯で、わかってやっている感が強い気がする。だから、周囲の不快な視線も最初から気付かないふりをしているし、なんなら「ダメなんて知りませんした」と言い出しそうな雰囲気で元気いっぱいやっている人も多い。
この喫茶店やコーヒーショップのオンライン会議。僕は死ぬほどイヤなので、一応、自分の真横でやられたりしたら、「オンライン会議は禁止らしいですよ」と言ってみたり、口に手を宛てて「しーっ」と言ってみたり、あからさまに迷惑そうな顔をしてみたりする。でも、それでも辞めない人はわざとやっているんだろうから、そんな人を相手にするのはイヤなので、自分から立ち去るようにしている。
ただ、周囲を見ると意外にみんな平気な顔をしている。携帯電話をあんなにイヤそうにみていたのに、みんなオンライン会議は平気なんだろうか。正直、携帯電話もオンライン会議も、数が増えてきたら、なし崩しに「まあ、いいじゃない」ということになるのだう。僕がいま気になっているのは、もうそのラインを越えているのかどうか、だ。そりゃもう、とっくになしくずしですよ、とか。もう、そんなこと気にしている人なんていませんよ、ということなら、僕はもう今後一切、人様のオンライン会議を気にしないことにする。たぶん、鬱陶しくは思うだろうけれど、静かな場所を求めて流浪したり、会議が終わるまで耐えたりする。もちろん、自分はぜったいに人様の前でオンライン会議なんてしないけど。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。