Wordがうるさいのよ、Wordが。
近頃、というか少し前から、コピーを書いて先方に送ると似たような修正が入るようになった。
一番多いのは、「たり」についての指摘。「たり」というのは、本来2回以上使うのが決まりなのである。それは僕も知っている。でも、近頃の口語では、「飯食ったりしてさ」と言うとき、飯を食べるだけじゃなくて、スイーツも食べたり、テレビも見たりすることを匂わせているわけである。でも、「たり」を1回だけ使うと、青い線がテキストの下に出てきて、「これ、間違いじゃないっすか?」とWordが教えてくるのだ。こっちはわかって書いてるからいいのだが、相手さんは「えっ、間違ってるの?」と思う。そして、「そうか、『たり』は2回繰り返さないといけないのか」と納得し、きちんと赤入れしてくるのよ。
あとは、「違うんです」とか「そうなんです」とかいうやつね。「んです」の部分に青い線が入るのよ。取材記事だからさ、話し言葉としてちゃんと言ってるんですよ。「この仕事に誇りをもってるんですよね」とかね。言ってるの。それなのに、Wordがおせっかいにも「それ、日本語の使い方として、間違ってない?」とチクってくるわけさ。すると、先方さんが、「この仕事に誇りをもっています」と訂正してくる。いやまあ、いいけど、オタクの社員さんはそんなに馬鹿丁寧な感じじゃないし、むしろ砕けた言い方のほうが等身大でいいと思うのよねえ。と伝えるんですが、「上が丁寧なほうが良いって言うんですよ」というわけで、どんどんWordの言いなり。
というわけで、最近は、「たり」を使うときには2回繰り返すように気を付けるし、「そうなんですよね」と書いた後に「そうなのです」と書き換えたりする。「そうなのです」なんて言ってるやつ、見たことねえわ。と思いつつね。
いやまあ、これって、もしAIがこのあたりのアルゴリズムを取り込んじゃったら、勝手に直されちゃうよね。勝手に「たり」を2回使う形にされちゃったりして。いやだなあ。めっちゃ嫌だなあ。と思いながら、仕事の文章には必ず「たり」を1回使いとか、「なんです」を1つは入れるのさ。へへへ。Wordなんかに負けないのさ。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。