スマートフォンのメモにある『over40ネタ』を見ると。
もう10年以上、このコラムを書いている。ほぼ毎週書いている。書いているのだけれど、あんまりネタにつまったことはない。だいたい、いろんな事件があるし、カフェにいれば、面白い人がいる。書きたいことがなくても、周りを見渡せば何かネタになる。
けれど、本当に年に一度か二度くらい、「何を書けばいいんだろう」と呆然とすることがある。で、そんな時のために、スマートフォンのメモに『over40ネタ』という項目を作ってあるのだ。あるのだけれど、年に一度か二度のために作ったメモだから、普段はすっかり忘れている。なので、前回見たのも半年以上前で、「よし、ここを見ればネタがあるぞ」とのぞいて見たのだが、なんのつもりで書いたのか、意味不明なメモがある。
大人は4メートルあるらしい。
赤ちゃんの泣き声になる。
頭を重くしてみたり。
さて、なんだろう。これは。3行あるけれど、一区切りごとに■印があるので、この三つはまとめて一つのネタなのはほぼ間違いない。本当に思い浮かばないので、こういうときのAI頼みだということで、「ChatGPT」に「大人は4メートルあるらしい。赤ちゃんの泣き声になる。頭を重くしてみたり。」というメモを放り込んで、「こんなメモがみつかりました。これはなに?」と問うてみた。すると、答えは「これはとても不思議で詩的なメモですね。それぞれを分析してみましょう」と分析を始めたのだ。
その壮大で哲学的な分析が打ち出されるのを眺めているうちに、僕は思い出した。何について書いたメモかをふいに思い出したのだ。そうだった。これは、確か、子どもの気持ちになってみようというイベントが東京で開催されていて、それをニュースで紹介していたのだった。子どもの目から大人を見ると4メートル超えの巨人に見えるとか、何かを話しても全部赤ちゃんの泣き声になるマスクとか、赤ちゃんの気分を味わう重たいヘルメットとか、そういうものが味わえるイベントだった。
で、それをニュースで見た僕は、いやいや「子どもからやっと大人になったのに、なぜまた赤ん坊の気持ちにならんといかんのだ」と思い、同時に「いったん大人になった僕らが疑似体験で赤ん坊を味わった気になるのは、もしかしたら今流行の『ちゃんと学びました病』になっちゃうんじゃないか」と危惧したことまで思い出した。
と、結果的に、ネタメモを見つつ、原稿を一本書いてしまったことになるのだけれど、「わからないなあ」という疑問がすべてのスタート点なのかもしれない。根は暗いし、落ち込みやすい性格ではあるのだけれど、好奇心だけは旺盛なので、まだまだ書けるのかもしれないなあ、と思った今日この頃である。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。