チョココロネ
幼稚園の頃に、チョココロネの存在を知った。パンが巻き貝のようになっていて、中にチョコレートが入っている菓子パンだ。大人になった今でも、たまに食べたくなって、一人で買って食べてしまうことが年に一度か二度ある。でもそのたびに、なんだか自分のことを少し卑下してしまうのだ。
実は、チョココロネを食べるとき、クルクルと巻き貝のようになった『とんがったほう』から食べるのが好きなのだ。食べたことがある人ならご存じだろうが、チョココロネのチョコは、あのとんがった先端部分には入っていない。だんだんと太くなっていく『底のほう』に、チョコがたっぷりと詰まっているのである。
なんにも入っていない、ただクルクルと巻かれたとんがった部分から食べ始めて、だんだんとパンが太くなり、やがてチョコの味がしてきて、最後の最後に、ドカンとチョコが口の中に飛び込んでくる。あの感じが好きで、たまらないのだ。
でも、幼稚園の頃、そんなふうに食べている自分のことを「卑しいなあ」と思った記憶がある。「ちゃんと食べたいチョコが入ったほうから食べればいいのに」と、幼いながらに思った。それでも、「いや、ボクはチョコを後で食べたいのだ」と、自分の声を無視したのである。
それ以来、大好きなチョココロネを、大好きな食べ方で食べているのに、なんとなく後ろめたい気持ちになってしまう。しかも、「卑しいなあ」と思ったのは、他人ではなく幼稚園の頃の自分なのだ。なんというか、自分で自分の首を絞めているとはこのことか、と思う。ボクの『チョココロネの呪縛』は、いまもなお続いている。
なぜこんなことを書いているのかというと、いま猛烈にチョココロネが食べたくなっているからだ。そして書けば書くほど、余計に「チョコのほうから食べたほうがいいのでは」と思えてくる。いや、チョコのほうから食べなくても、とんがった部分をちょっとちぎって、チョコに付けて食べるとか……。いや、ダメだ。やっぱりチョコは、最後の最後に、ドカンと食べたいのだ。
それか…どこかのパン屋さん、てっぺんまでギチギチにチョコが詰まったチョココロネ、作ってくれませんかね。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。