優しさの記憶 : 身欠きにしんの煮物
どうも。
インフルからの復活を遂げたと同時に二度目の『君の名は。』を観に行ったミカスです。
<真知子巻き・・・って、そっちじゃない!>
先日、母とスーパーへ買い物に行きました。
楽をしようと思ってうろついていたお総菜売り場で(最近料理熱急降下中)
突然ミカス母娘に駆け寄る人影。
ご近所のおばあちゃんでした。
おばあちゃん、両手で母の手をぐわし!と握って「ミカス母さぁぁぁぁぁぁん!」。
「ミカス母さんは私の恩人なのよぉ。本当にありがとうねぇぇぇぇ!」と、今にも泣かんばかりです。
実はこのおばあちゃん、母と会うたびにこれを繰り返します。
どうやら、引っ越してきて初めて参加した町内会の集まりで、
どうしたらいいのか戸惑っていたところに
母が「ここに座ったら」と声をかけたのだそうです。
「あの時ミカス母さんが声をかけてくれて、私、本当に救われたのよ。
あの時のことは一生忘れないわ」
おばあちゃんが引っ越してきた時期を考えると、それもうかなり昔の出来事です。
当の母も「私、そんなことしたかなぁ?」と毎回首を傾げます。
いや、母が忘れん坊になったから覚えていないのではなく、
忘れん坊症状が出る前から母は「そうだったかなぁ?」と繰り返していました。
おそらく、母は何気なくおばあちゃんに声をかけたのでしょう。
それでも、それは初めての場所で不安だったおばあちゃんにはとてもうれしい優しさだった。
だから、何年も何年も経った今でさえ、彼女はそれを大切に覚えている。
私にも同じような「優しさの記憶」があります。
東京の学校に進学したばかりの私は、
クラスメートが皆お洒落で人馴れしている風であることに戸惑っていました。
田舎から上京したての私は、知り合ったばかりなのに旧知のようにはしゃぎ合うみんなの中に
入っていくことがなかなかできずにいました。
そんなある日、学校の最寄りの駅で地元の友人と待ち合わせていた私は
できるだけクラスメートと顔を合わせないよう、大きな柱の陰に身を隠すように立っていました。
(今思えば、あの頃の私はどうしてそんなにびくびくしていたんだろう?)
すると、後ろから肩をぽんぽんとたたく人が。
振り向くとそれは同じクラスのMくんでした。
「ああ、やっぱりそうだ。同じクラスだよね。ミカスさんだよね。さよなら。また明日ね」
そう静かに言うと、Mくんは改札の中へ入っていきました。
私にさよならを言うためだけに彼は立ち止まり、私の肩をたたいてくれたのです。
彼の「さよなら」で、私がどれだけ救われたか。
30年以上経った今でも、私はあの瞬間のことをはっきりと覚えています。
母の一言にいまだに感謝しているおばあちゃんと同じです。
静かに優しくされた記憶は静かに心に残ります。
派手なものではないけれど、確実に、深く、残ります。
私も、そんなふうに誰かの中に静かに残るように優しくできたらと思うのですが、
だいたいそんな風に意識をした時点で、静かなものではなくなってしまうのかもしれませんね。
さて、今日の一品は、派手ではないけれど静かにしみるような美味しさ「身欠きにしんの煮物」。
無理やりこじつけてやったぜ! ワイルドだろぉ?!
身欠きにしんはソフトタイプを使ってください。
カッチカチのタイプのものだと、戻すのに時間がかかります。
『身欠きにしんの煮物』
- ソフトタイプの身欠きにしんを水で洗い、食べやすい大きさに切り、中火で20分下茹でをします。
- 下茹でが終わったらゆで汁をこぼし、にしんを軽く洗います。
- 鍋に、酒、しょう油、みりん、砂糖、水を入れ、強火にかけます。
しっかりとした味でぺったりと煮つけたいので、水は少な目に。焦げることを防ぐために少量加える程度でOK。 - 3が沸騰したら火を中火にし、にしんを加えます。
- 落し蓋をして、30分ほど煮ます。水が少なめな分焦げやすいので、鍋から目を離さないように。
煮汁が減って焦げそうな感じが出てきたら水を足してください。 - 煮汁がとろりと煮詰まって、照りが出たら出来上がり。
それにしてもMくんは今頃どうしているのだろう?
51歳のオッサンか。
いや、私も51歳のおばちゃんだけどなぁ。
光陰矢の如し、はぅ ・・・。ミカスでした。
masakobe
うわ〜、まるでジブリの青春ものの一場面のようです!
にしんをお料理されるあたり、やはりミカスさんはタダモノではない。
私はもちろん買ったことがありません。
にしん料理と言えば、にしんそは。私は食べず嫌いなとこがありますが、主人も息子も大好きだそうです。
ミカス Post author
masakobeさん
あの時声をかけてくれたこと、きちんとありがとうと伝えておけば良かったと今でも後悔しています。
身欠きニシン、ソフトタイプを使うと楽に調理できますよ。
妹は、ソフトタイプを焼いて食べるそうです。
小骨が多いのが難点ですが、濃い目の味でしっかり煮ると美味しいですよ。