母岳大噴火 : スペアリブの煮込み
今日はちょっと重い話。
なので、極力軽い調子でお話します。
先日久しぶりに母岳が大噴火を起こしました。
さっきまで普通に話していたのに、なんとなく雲行きが怪しくなってきて
「ああ、もう終わりにしたい」
出たー!!
この「終わりにしたい」発言、噴火注意報です。
発令されたらきっと来る。
<来る、きっと来る…>
これはヤバいなぁと思っていたら
「待ってたって終わらないんだから、自分で終わらせる。
死ぬ!!」
はい、注意報が警報に変わりました。
しかも特別警報な。
さぁ、こうなったら手が付けられない。
「死ぬ」と言って、薬がありそうな場所を片っ端から漁り出します。
母の頭の中には『自死=薬の大量摂取』という図式があるようです。
刃物、と思わないでくれるのはまだありがたい。
さりげなく薬の引き出しの前に立ちはだかったりして
なんとか薬に手を伸ばさせないようにするのですが、
それがまた母は気に入らない。
「私には引き出しを開ける自由もないのか?!どけ!!」
私に掴みかかります。
この辺りまではよくあるルーティーン。
これが「よくある」っていうのすごいけどね。
<世の中、素敵なルーティーンばかりではなくってよ>
ところが、この日の母はルーティーンをはるかに超えていました。
掴みかかりながら、私に罵詈雑言を浴びせかけます。
「家に居ても親のために何をするわけでもない。
この役立たず!」
極めつけは
「ぶっ殺してやる!」
ああ、もうダメだ。
母の目を盗んで、ケアマネージャーさんにメッセージを送りました。
「手が付けられません。今日は特にひどいです。
ショートステイは明後日からですが、
明日からに変更できませんか?
私、手を上げてしまうかもしれません」
そう、これまでの経験からしても、
なんとかやり過ごせば母の噴火が収まることは分かっている。
ダメなのは私でした。
明日になれば母は自分が噴火したことなど忘れて
ケロッとして笑うのでしょうけれど、忘れることができない私はきっと
「人をあれだけ罵っておいて、ニコニコ笑ってるんじゃいなよ。
バーカ、バーカ!」
と、自分の感情と折り合いを付けられずに煩悶するに決まっている。
もう夜の8時を過ぎていましたが、ケアマネージャーさんは
「今すぐ行きます!」と返信をくださいました。
ただ、他人が介入することで火に油状態になるのは避けたかったので
「なんとか耐えます」とお断りして、
ショートステイのスケジュールを前倒ししてもらいました。
自分で布団を敷いて横になったものの、
母はしばらくは布団の中で大声を上げ続け、
突然「眠れないので薬をください!」と叫んで薬を飲んで
コトンと眠りました。
今までの騒動からしたら拍子が抜けてしまうほどあっさりとね。
翌日のショートステイにも、これまでにない程機嫌行く出かけて行きました。
憑き物が落ちたかのように。
母が噴火する度に、私は心底途方に暮れます。
「助けてください。助けてください」と思いながら
事態が収まるのを待つけれど、
一体誰に助けを求めたらいいのかがわからない。
で、結局、普段ろくに信じてもいない神様に祈っちゃったりする。
確かに、介護者や患者をサポートしてくれる組織やシステムはあるものの、
活動時間は決まっているし、定休日もあります。
本当に緊急の事態や、御しがたい強烈な感情に突然襲われた瞬間、
そう「今」を救ってくれる人、システムはないものか。
公的なものじゃなくとも、介護者同士の互助的な連携でもいい。
と、そんなことを私はずっと考えています。
少し重めのことを考えてしまう時は、献立を考えたり、ましてや
食事の支度をするのも億劫になります。
ただ、煮込み料理は別。
コトコトと時間をかけて煮込む料理は、火にかけてしまえば手がかがらないし
湯気の上がる鍋を眺めながら心を落ち着かせることもできます。
そこで、今日の一品は『スペアリブの煮込み』です。
じっくり煮込んだ肉は柔らかくなって骨からもほろりとはがれ、
とても美味しくなります。
ポイントは、「弱火でじっくり」。
『スペアリブの煮込み』
- スペアリブに軽く塩コショウをします。
- 深めの鍋で油を熱し、1のスペアリブを焼きます。
- スペアリブに軽く焼き色がついたら、ひたひたに水を加えます。
砂糖、酒、みりんも加え、沸騰したら限りなく弱火に近い中火にして
蓋をして煮ます。 - 時々中をのぞいて、あくをすくってください。
- 5分ほど煮たら、醤油と少量のお酢を加えます。
- 蓋をして、ひたすら煮込みます。
あくまでも弱めの火でじっくりと。 - 肉が骨からはがれかかったような状態になれば出来上がり。
「助けてください」と思いつつも、
ひょっとしたら誰かに助けなんて求めたらいけないのかな
と思うこともあります。
私、甘えてるのかな?と思うことも。
でも、自分のことはもちろん、
どこかに私と同じように途方に暮れている人がいるのかと思うと
やはりなんとか助け合える方法はないものかと考えてしまいます。
ミカスでした。
ぺいたお
ミカスさん、こんにちは。
10年前、義母が狂気と正気を行き来していた時期を思い出しました。いっそ行きっぱなしでいてくれたほうが楽で、行き来の落差についていけず、その言葉に翻弄され、頭に血も昇りました。
だけど、実の娘に対しての方が、もっと激しい落差をみせていたことも思い出しました。義姉は強い責任感をもってあたっていましたが、「もうだめと思ったときが何度もあった」と、思いを吐露していました。
そして、さらにさかのぼると、義母は義父の認知の衰えに、ほぼ一人で奮闘していたのでした。
なにかできたらいいけれど、なにもできなくて、すみません。
もうミカスさんは知っていることでしょうが、その言葉はミカスさんとは一切関係がありません。その言葉は病気に向けられたもので、必死にお母様はたたかっているのだと思います。
ジェーン
アメリカに住んで数年になるものです。実の両親も義理の両親も他国におり、親の介護には関わっていませんが、うちは夫がエンペラーです。高齢や病気でそうなっているわけではなく、外では人格者、成功者で通しています。料理が気に入らないから裁判だ、子供が言うことを聞かないから警察だ、と騒いで料理を床にぶちまけたり椅子を投げたりするレベルです。私はアルツハイマーまたは精神疾患のある義父と住んでいると思うことにしています。今週後半はサンクスギビングで誰も客が来ない代わりに夫がずっと家にいるので地獄ですが、死んでいるつもりで受け流します。私の記憶力も落ちてきてわりとすぐ忘れられます。噴火、本当にそうですよね。うちはブーフーウー、と夫が鼻息荒くするのが噴火数秒前の警報です。ミカスさんの文にも、料理の紹介にもとても助けられています。
ミカス Post author
ぺいたおさん
お話くださって本当にありがとうございます。
ご家族皆さん大変な思いをされたでしょうね。
そして、お義母さん自身も旦那さんへの対応で辛い経験をされていた。
切ないですね。
おっしゃるように、こちら側にいる時とあちら側にいる時の落差が辛いですね。
常にあちら側にいるのなら、それはそれで悲しいけれど、病気なのだとはっきりと自分の気持ちを切り替えることができます。
でも、こちら側でしっかりとしていられる姿を知っていると、罵声を浴びせられるたびに「あぁ、この人は私のことをこんな風に考えているのか。私はこんなにも嫌われているのか」と思ってしまうんです。
こちらの精神が崩壊してしまいそうになるなります。
母に認知症の診断がおりた時、お医者さんが私に「一番側にいる人の接し方が重要です。あなたが否定ばかりすると、お母さんはあなたのことを敵だと感じて攻撃するかもしれません」と言いました。
たまたまそれを聞いてしまった母は泣きました。
お医者さんは「こんな事を聞かせてしまってごめんなさい!僕が出来るだけのサポートをしますから」と必死で謝ってくれましたが、母にとってはショックだったのでしょうね。
結局、攻撃するようになってしまいましたが(笑)
認知症による周辺症状自体を完全に抑え込むのは難しいことですが、介護者の精神的負担、特に緊急なものに対応できるサポートを何とか作り出せないものか考えてしまいます。
ミカス Post author
ジェーンさん
ああ、ジェーンさんも大変な状況の中にいらっしゃいますね。
認知症の家族については、よく「病気なんだから」と言われますし、自分でもそう思うことでなんとかごまかそうと思ったりもします。
でも、やっぱり辛い。
ジェーンさんの旦那さんの場合、病気ではなくご本人の性格に起因しているのですよね。
それはそれで辛いなぁ。
ジェーンさん、大丈夫ですか?
といって、私に出来ることがあるのかどうかわからないけど、心配です。
全てをぶっちゃけて話せる相手はいますか?
私のへっぽこ記事でも多少の救いになれば幸いです。
何があったら、記事に関係なくてもかまいませんので、オバフォーのアドレス宛へのメールにぶちまけてくださいね。
もしかしたら、このコメントを書くことで嫌なことを反すうするような思いをしてしまったかもしれませんね。書き込んでくださってありがとうございます。
絶対に頑張り過ぎないように。耐え過ぎないように。
Tompei
ミカスさん、はじめまして。
お母様の話題を読ませていただくたびに身につまされ、共感し、励まされており、コメントを書きたいと思いながら今日に至りました。
認知症と思われる症状が徐々に進んでいる90歳の実母に向き合うと、ひどく消耗し、感情を抑えられずに叱りつけてしまうことがあります。後で自己嫌悪に陥り、反省するんですけど、その時はどうしようもない。「噴火」に比べれば些細なことなのに情けないかぎりです。
「助けてください」というお気持ち、わかりますよ。何のお力にもなれないけれど、ここに書くことで、ほんの少しでも気持ちが楽になっていますように。そういう気持ちを分かち合って支え合う場所があったらいいですね。
うまく気分転換しながら、なんとか踏ん張って乗り切りましょう。美味しいものに癒されながら。これからも記事の更新を楽しみにしています。
ミカス Post author
Tompeiさん
はじめまして。
自己嫌悪、痛いほどわかります。
Tompeiさんは、介護のしんどさを話すことができる相手はいますか?
噴火に比べたら些細なことと仰いますが、それでも積み重なっていけばご家族は疲弊しますよね。
あまりご自分を責めないようにしてくださいね。
私も、ここに記事を書くことで少しずつ発散していきます。
Tompeiさん始め皆さんからコメントをいただいたこと、とても心強く思っています。
Tompeiさんも決して無理をせず、辛い時はいつでもコメント欄に書き込んでください。