第100回 響け!ユーフォニアム
「響け!ユーフォニアム」の原作は武田綾乃、アニメーション制作は京都アニメーションです。2015年にTVアニメ第1期(13話)が、2016年に第2期(13話)が放映されました。
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桜舞う4月。宇治北高校一年生の黄前久美子(おうまえくみこ)は、出会って早々彼女を「久美子」と呼ぶクラスメイト加藤葉月(かとうはづき)と私立中学時代の部活でコントラバスを演奏していたという川島緑輝(かわしまさふぁいあ)に誘われ、吹奏楽部へ見学に行きます。
そこで高坂麗奈(こうさかれいな)と出くわし、吹奏楽部への入部を躊躇します。実は中学で久美子と麗奈は同じ吹奏楽部でしたが、吹奏楽への想いの深さは大きく違っていたことが分かり、顔を合わせづらくなっていたのです…。というところから始まる第1期。
大会がありチームで勝ち進んでいくタイプの部活ではこういう温度差はあるだろうと、門外漢の私でも容易に想像できます。そして、大会にでるレベルの演奏とはどんなものか、初心者が合奏するレベルに達するまでの厳しさ、必ずしも上級生が下級生より演奏が上手いわけではない現実、学業との両立など、部員どうしや親子間の軋轢(と和解)が細かに描かれていく第2期。
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大所帯の部活ですし、人の数だけ何かしら抱えているものはありますものね。けれども、これほど嫌な感じの残らない作品を見たことがありません。
その理由はおそらく、主人公の久美子。キャラクターが、良いのです。
彼女は、突出して演奏技術が高いわけでもなく、強いリーダーシップを見せるわけでもありません。どちらか言うと押しに弱いのですが、かといってぼんやりしているわけでもありません。積極的にそういう立ち位置でいるわけではなさそうですが、部員の中にあっては中庸。バランサーというのでしょうか。
彼女にも悩みや不安はあるけれど、それをうまく言語化できずにいます。自分のもやもやは保留していますが、他人のことに関わっているうちに自分の気持ちにも整理がついてくる-この、そもそも彼女の中にコレといった確信がないところにリアリティーを感じます。
間をあけて一話ずつ視聴すると、彼女のゆっくりした変化と部員たちの変化に納得がいくのです。
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続編にあたる映画「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」(2019)、「特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~」(2023年)では二年生の久美子とその仲間がえがかれています。
そしていよいよ久美子も三年生。4月7日以降、毎週日曜17時から第3期がEテレで始まります!
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TVシリーズと劇場版は、アマプラ、Netflix、U-NEXTなどで配信中です。(~アンサンブルコンテスト~はU-NEXTのみ配信)
放映時、楽器演奏の指使いが音とシンクロしている!と評判になった繊細なアニメーションと、宇治のまたたく街灯りや流れる川、ガラスに映った部員たちの顔など、演じる背景画は京都アニメーションならでは。ぜひご堪能ください。