切り裂いて走る
ウサギの体で耳に次いでよく目立つのは後ろ脚です。生まれたばかりの小さな体にも不釣り合いなほど大きな足がついています。
ウサギイラストを描くとしたら、体の後ろ部分に数字の2のように丸いカーブと大きな足をつければずいぶんウサギらしくなります。(丸いカーブ部分は膝にあたります)。
ウサギはこの脚で速く走り、うたっちする体をしっかり支え、警報の足ダンを鳴らします。座っていると丸くたたまれていますが寝起きのノビなどではよく伸び、毛で覆われた足裏まで見えます(イヌやネコのような肉球はありません)。
走るときは踵をあげて趾で走ります。つま先立ちで軽く速い。
まず両前足を縦に交互について、両趾で地面を蹴り背中を丸めて両足をそろえて前足より前につきます。のんびり歩くときは踵をつけますが、やはり両足はそろえて動かし、後ろ足が前足の前につきます。
跳び箱を跳ぶ動作に似ているこの進み方は跳躍前進というそうです。
うんざり!という気持ちを表すときには地面を蹴った後ろ足を空中でちょっと止めるみたいにしてことさらに足裏を見せつけて逃げて行きます。
他の四脚動物のようにとことこ歩くことは滅多にないのですが、おっかなびっくりのときは片足ずつついて移動することもあります。
小説『ウォーターシップダウンのうさぎたち』のなかにギリシャ神話的なウサギ誕生譚があります。穴を掘っていたウサギへのプレゼントは穴から突き出ていた尻と後ろ脚に与えられた力でした。
プレゼントの力をもらうと「And his back legs grew long and powerful. And he tore across the hill, faster than any creature in the world.」となるのでした。この文章はアニメ版のナレーションなのですが、Tore=引き裂くという意味で、空間に一直線がひらめくようなウサギの走りが目に浮かんでくるのです。
じっさい、ウサギは骨を軽くし、筋肉を発達させて高速走行に進化したようです。脚に力が与えられたのでした。
ウサギの走りの速さは設備類に用いられる図柄にも反映され、動作速度を速い順にウサギ、カメ、カタツムリの図柄で表すことがあるそうです。機械の変速機構操作の表示にウサギとカメの絵が描かれたり、ミシンの速度調節表示にも用いられているそうです。
ミシン?えっ見逃してた? あわててミシンにダッシュ、確認しましたが、残念「はやい」「ゆっくり」と書いてありました。
またウサギの足はラビットフットというラッキーアイテムにもなっているようです。ウサギはその繁殖力の強さから生命力そのものと繁栄をあらわす意匠として使われることも多いですが、イギリスやアメリカではシルバーなどの留め具をつけてキーホルダーふうのお守りになっています。最近はもちろん足は作り物だそうですが、本来ホンモノ。
この話を画像付きで見聞したときは、ラッキーアイテムだとしてもショックでした。今だってビクッとなってしまいます。ウサギを好きなのかそうでないのか・・。ホンモノだったらその足が丘を切り裂いて走っていたことを考えずにはいられません。まあ、そのエネルギーあってこそのお守りなのでしょうけれど。
とにかくウサギの脚は立派で、速く走る能力は素晴らしい。段差を上っていくのも力強く得意です。この力強さが少々弱点になるのが下り坂や狭い段差。制動するには前足が短めで前のめりで歩きにくそうです。
うさちゃんの空間の段差解消をするときは下りに気を配ってあげたいと思っています。