ゾロメ日記⑲ 人生は連作短編だ
◆8月某日
めっきり秋めいてきた。
義父母そろっての要介護生活も5ヶ月になろうとしている。義母は2年以上前から要介護の認定を受けているが、今年の春、義父が突然失明してしまい、家庭内の要介護認定者が倍増した。ひとりとふたりでは全然違うなあというのが正直な気持ちだ。
とはいえ、自分がやっていることは基本的には介護ではなく介助だと思う。世の中には、私なんかよりずっと踏み込んだ本格介護をしている人はいくらでもいる。でも「だから自分ごときが愚痴や弱音を言うべきじゃない」とは思わない。
レベルはどうあれ、常に家族の介助を念頭に置かなければならない生活は気が抜けないし、それがいつまで続くかわからないのはキツい。何キロ走るかわからないマラソンをさせられているみたいでペース配分がわからない。
無意識に介助生活の終わりを願っていたりする自分への罪悪感と向き合うのも、介助される側もする側も心身のコンデションは一定ではなく「不安定で不穏な状態がデフォルト」という現実も、ハードだ。ボディブローのように疲労感が日々じわじわと蓄積する、という意味では、踏み込んだ介護者も「自分ごとき」も同じだと思う。
だから私も愚痴をこぼす権利がある、と腰に手を当てたいわけじゃない。ないが、時々、自分を哀れんだり正当化してしまう。したらしたで、後悔し、みっともねーな自分、と自己嫌悪に陥るのが常なのだが。人に言ってみたら「なんだ、たいしたことないじゃないか」と思うことも多々あるので、それ狙いの愚痴、という姑息感も否めない。私の周囲の「よく愚痴を聞かされている人たち」ごめんなさい。
ままならない日常というのは、そういう、言葉や文字にすると詮無いことの繰り返しだ。介護や介助とは無縁の生活をしている人だって、自分はなんて不幸なんだろうと涙したり、口にしたことに身悶えするほど後悔したり、やみくもに苛立ったり、我を忘れてはしゃいだ挙句にぐったりしたり、いろいろぎくしゃくして暮らしているのだそうなのだそうに違いないそうだよね。
「私は違います。全て受容し、ポジティブに受け止め心穏やかに暮らしています」なあんて真顔で言う輩には正直、近づきたくない。そう心がけているのは勝手だが、今は迂回したい気分。
◆8月某日
そんなわけで、なかなかまとまった時間がとりづらい生活をしていると、活字も映像も、区切りがつけやすいモノに走りがち。コラム、短編(もっといえば連作短編)、オムニバス。
もともと連作短編好きで「第1回ゾロメ女文学賞」の『床屋さんへちょっと』も、「第2回・・・」に推したいくらいの『昨夜のカレー、明日のパン』(木皿泉)や『茗荷谷の猫』(木内昇)も連作短編集だ。
一話でも成立しつつ、繋がるほどにどんどん奥行きが見えてくるような、散りばめられたエピソードが徐々にひとつに集約されるような連作短編が好ましい。それと、ひとりの人間やひとつの事象が、光の当て方でいろんな風に見えてくるというのもたまらん。たまらん坂なのである(東京都国分寺市)。
映画もそう。映画館で7回見たアラン・パーカーの『フェーム』は、芸術学校に通う学生何人かに順番にスポットを当てて卒業までを追う、ドキュメンタリータッチのオムニバス的作品だ。1980年の映画だが、卒業式のラストシーンは何度見ても胸が震える、私のオールタイムベスト1だ。
そして今は、CSで録ったテレビ東京の連続ドラマ『まほろ駅前番外地』を視聴中。映画版とは微妙に違っていて、それがパラレルワールドみたいで楽しいし、出てくる俳優さんがこぞって魅力的。レギュラー陣はもとより、新井浩文の善人っぷりはどこか不気味でワクワクするし、今をときめく黒木華ちゃんのぶっ飛びっぷりも麗しかった。
1話が短いのっていいなあ。海外ドラマ『ビックバン☆セオリー』も1話20分というのが私には大きな魅力だ。VIVA!短め!!
あ、リアルな自分の生活も連作短編ってことにすればいいかもしれない。長編扱いをするからよけいな感情を盛ってしまうのかも。毎日(あるいは毎週、毎月)、強引に完結させて、次からは整合性に多少欠けてもパラレルワールドってことにして、あらたな視点にする。なんなら、次章の脳内語り手は猫にする・・とか。
ねえ、ミイちゃん、涼しくて気持ちいいからって寝てばっかりいないで、アタシの話も聞いてくれよ。
by月亭つまみ
友人との掛け合いブログです。♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
はしーば
私も半年前から両親の介助生活状態になり、1時間の通勤電車の中ですら、小説は読めなくなりました。
「ページをめくればソッコー小説の世界」だったのに、今は頭も心も集中力を伴う遊びに付き合う余裕がないみたいです。
ゴールが分からないマラソン、外的要素は多々あれど、ペース配分を決めるのは結局自分自身だったりしますよね。
あー、と書いていてこれは立派な愚痴だと気付きました。
御容赦下さいませ。
okosama
つまみさん、こんにちは
生活が連作短編⁈
それ、いただきます!
つまみ Post author
はしーばさん、こんばんは。
そうですか。半年前からですか。
体調は、気持ちは、大丈夫ですか。
余裕・・曲者です。
物理的に時間ができても、それは必ずしも余裕とは直結しなくて
たとえば間隙を縫って、友達に会ったり気晴らしに出かけようとしても
そうするためには、前もって事前の準備というか画策というか工作をせねばならず
最近はなんかもう、そういうことがめんどくさいのです。
余裕を創る余裕がないのかなあと危機感を覚えています。
あ、もう完全に愚痴じゃないですかっ私!
ごめんなさい。
つまみ Post author
okosamaさ~ん!
粗品ですが、よかったら使ってくださいませ!
私もとりあえず、しょぼかったサマーシーズンはとっとと終わらせて
オータムスペシャルシーズンで、内容充実のテコ入れを目指します!?