ゾロメ日記 NO.79 師走直前、食べ物あれこれ そして映画
◆11月某日 要するに鍋礼賛?
はたして、各家庭の食事担当者はどのぐらいの頻度で食材の買い出しに行っているものなのだろうか。
とりたてて大食いでもない中年夫婦と、明らかに小食の高齢女性の3人家族である。3人共、昼以外はほぼ外食しないとはいえ、朝も夕もたいしたものは食べていない。でも、けっこう大量に食材を調達したつもりでも、2日ぐらいで冷蔵庫の中はスカスカになるし、エンゲル係数も右肩上がりの印象だ。意外と食ってるのか、われわれ。それとも、わがやの冷蔵庫の中にはブラックホールでもあるのだろうか。
食材は重いし、腰痛持ちの身でもあるので、生協やネットスーパーの利用も脳裏をよぎるのだが、なかなか踏み出せない。理由は、生協にさほど心惹かれないことと、他のネット通販で、もう自分の通販許容量が満タンなこと、あまり外出しないのでスーパーぐらいには行っておこうと思うこと、なのだが、もしかしたら、生鮮食料品は現物を見て買いたい、というのがいちばん大きいかもしれない。
食材を見る眼や選ぶ眼に自信があるわけじゃない。むしろない。そして、料理は特に好きではなく、ほぼ義務でやっている。でも、だからこそ、見て選ばないとやる気が起きないのだ。
あらかじめ献立を決めて買い物に行くことはほとんどなく、その日のお買得品や全体の品揃えを見て初めて「今晩はコレにして、明日はアレにしよう」と思う。私にとって買い物は、料理へのアイドリングなのだ。
さて、鍋の季節到来だ。
一年中、食べているといえば食べているが、やっぱり鍋といえばこれからが旬だろう。で、ここまでの文章を全て引っくり返すようだが、冬期は毎日鍋でいいんじゃないだろうか。あったまるし、お味噌汁を作らなくていいし、野菜もふんだんに摂れるし。
オーソドックスな鍋に、オイスターソースをちょこっと垂らすと美味になることに最近気づいた。鍋の具材としての油揚げとキノコを偏愛しているが、その二品を常識より多めに入れると、どんな鍋でもコクが増すことも発見。…あ、発見ってほどではないな。調子に乗りました、スミマセン。でも、この冬は「鍋シバリ」でいろいろなバリエーションにチャレンジするのもいいかもしれないと思っている。…ラクしたいだけかもしれない。
◆11月某日 食べる私と映画
「食」をテーマに29人の各界の著名人に取材をした本、『食べる私』(平松洋子/著)が面白かった。
登場するのは、そもそも食に関わりのある職業や立場の人も多いけれど、とりたててそうでもなさそうな人もまじっている。でも読めば全員納得の人選。平松洋子さんの聞き手力、構成力によるところが大きいと思う。なんなの、この安定感。
印象的だったのは、ヤン・ヨンヒ、黒田征太郎、伊藤比呂美、ジェーン・スー、宇能鴻一郎、篠田桃紅。彼らの章はぐいぐい読めて、もっと読んでいたかった。
読んですぐ、ヤン・ヨンヒ監督の映画『かぞくのくに』を見た。ヤン・ヨンヒその人の自伝と言っていい、在日コリアン一家を描いた映画だ。『食べる私』で言及されてきた内容とほぼ一致する、心にずしんとくる作品である。
北朝鮮への帰国事業によって十代で日本を離れた兄ソンホを井浦新、日本に残った妹リエを安藤サクラが演じている。どちらも適役だ。ソンホは病気治療のために一時帰国してくるのだが、ソンホの見張り役として一緒に来日するヤン・イクチュンという俳優の存在感が物凄い。
彼は、一個人ではなく国の一部として日本に来る。そして任務と個がせめぎ合う。彼は、威圧的で愚直で純粋で老成していて、取り付く島がなくてすきだらけだ。忠誠心と個の戸惑いと迷いが、ますます彼の人間性をさらけ出すことになるのである。
来日直後、ソンホの家族が経営する喫茶店で出されたコーヒーに彼はスプーン3杯の砂糖を入れ、リエに失笑される。やたらせつないシーンだ。リエに国のことを悪しざまに言われ、「あなたの嫌いなあの国で、お兄さんも私も生きているのです。死ぬまで生きるんです」と返すシーンもとても印象的だ。そして、宮崎美子扮する(ソンホとリエの)オムニが、ラスト近くで、ブタの貯金箱にため続けたお金をなにに使ったか、どうしてそれだったのか、を知ったときの彼の表情もたまらない。
一度目はストーリーを追って見たが、二度目はヤン・イクチュン中心に見た。
…もしかして惚れたのかな、私?
by月亭つまみ
【木曜日のこの枠のラインナップ】
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4、5木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 ゾロメ日記】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
凜
つまみさんこんにちは。
私も二人家族ですが、3食自炊なので買い物は毎日行きます。やっぱりできるだけ見て選びたいし、新鮮なものを体に取り込みたいし、買い物じたいいい運動&リフレッシュにもなりますしね。
お鍋いいですよね~体もお部屋もあったまるし洗い物も普段より少ないし野菜も自然にたくさんとれるし(^^♪
水炊き、キムチ鍋、ちゃんこ、しゃぶしゃぶ、すき焼きといろいろありますが、最近目覚めたのが柚子(果肉ごと)とちょっとの塩でいただく「鶏すき焼き」です。牛だとすごく気合がいるんですが(買うのに(^^;)、鶏なら気軽だし、柚子がすごくさっぱりしているのでいくらでも食べられますよ(^^♪
「かぞくのくに」、すごく見たくなりました!
つまみ Post author
凛さん、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。うれしゅうございます!
凛さん、買い物は毎日行かれているのですか。
私は週3ぐらいですかね。
そうですそうです。
実際に見る効果、侮れません。
いずれ年老いて、いつ、どういう経緯にしろ「食材を見て買うことができなくなる」わけで、行けるうちにちゃんと行っとこう、という気持ちもあるかもしれません。
あ、今初めて思ったことでした。
まるで、常々思ってたみたいに書いてしまいました。しゃらくさい(^^;)
柚子、いいですねえ。
柑橘類の中でも、鍋との相性は別格のような気がします。
果肉ごとですか。
早速やります!
凜
「ホントは教えたくなかった。板前が後悔しながら公開する鶏すき焼き鍋」で検索してみてください。究極の割り下レシピ付きです。柚子が買えなかった時にはポッカレモンでやりましたがそれでも美味しかったですよ(^_-)-☆
つまみ Post author
凛さん、検索して、見ました!
絞った柚子、本当に美味しそうです。
記事のタイトルだけでなく、文章も面白いですね。
クソッたれ~~と叫びながら柚子を絞るとか、柚子ポン酢をベッチョリつけて食ってください、とか。
近々、やってみます。
ありがとうございました♥