◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第7回 頭がいい、知性、ってなに?
「クイズ!脳ベルSHOW」が好きだ。2015年からBSフジで放送されている月-金の帯クイズ番組で、司会はますだおかだの岡田圭右。回答者は4人。懐かしい人(おニャン子枠と欽ちゃんファミリー枠がある気がする)、往年のスター、名バイプレイヤー、伝統芸能関係者、そもそも知らない人、が入れ替わり立ち替わり、2日単位で登場する。年齢は若くて50代。80代も珍しくなく、その世代が出演すると「ようこそいらっしゃいました」という歓迎ムードが醸し出される。逆に、40代なんて完全にひよっこ扱いだ。
この番組は、今年の春から東京では地上波で、なぜか朝の4時台に再放送されるようになった。実は私はそれ以降の視聴者で、今は日々録画したものを食事時などに見ているのだが、この記事を書いているとき、番組内は2018年の年明けである。放送時間といい、11ヶ月のタイムラグといい、地上波的には、かなり微妙な扱いだ。
クイズの問題は、自分が回答者の年齢に合致するだけあってドンピシャだ。30~50年前のヒット曲の歌詞の穴埋めやイントロあてクイズ、CMの決まり文句、映画やドラマの名台詞、人気や話題の商品の当時の価格、著名人のアナグラム、あるなし…などなど、超難問はないものの存外に難しい。ホント、意外に答えられないのである。
でも、見ていて楽しい。そう、とても楽しいのだ。司会の岡田さんがすごくいい。誰に対しても臆せず、おちゃらけながら、でも自信満々に進行している。自信満々な岡田圭右なんて他のバラエティではめったにお目にかかることがない。そういえば、彼はビジュアル的にはかなりかっこいいんだったな、とこの番組であらためて気づいた。
一方で 「東大王」なるクイズ番組がある。たまにしか見ないが、その名のとおり、東大生、その中でも選りすぐりのプロのクイズプレイヤーを名乗るメンバーもいる猛者チームに、こちらも知力自慢の、その手の番組ではおなじみの、いわゆる「高学歴」芸能人達が挑む形式(たぶん)だ。
東大チームは基本的に、相手チームにも視聴者にも、答えを考えるヒマを与えない速度で回答してくるので、こっちはハナっから諦めムードだ。参加している意識はさほどない。司会者同様、「さすが」「これだけでなんでわかるの?」と思うばかりだ。
ふたつの番組を見ていると「頭がいいこと」や「知性」について考える。はたして、地球規模からさほどズームアップしてない衛星画像を見て世界遺産名を当てることと、1982年発売の菅原洋一とシルビアのデュエット曲「アマン」で「かき上げる長い髪の女は、さて『何の匂い』だと言ってるのか?」がわかることに優劣はあるのか。…もしかしたら東大王の猛者は、後者の答えも知っていたりするのかな。いや、まさかなあ。
20代が、膨大な知識量や知能指数や記憶力や先読み力で難問を解いてクールにキメるより、明らかに人生の後半、下手すりゃ終盤に近い(かもしれない)人が、半世紀前のことを鮮明に記憶していたり、岡田(敬称略)のゴリゴリのツッコミに当意即妙に返すことの方に知性を感じるのは、自分の完全な贔屓目、そしてやっかみ、なのだろうか。…なのだろうな。
でも正直な話、頭がいい、知性がある、で自分が誰かを羨ましかったり、あやかりたいと思うのは、それが、その人の脳内宇宙を拡げたり、世界観を「生き易い方向」にシフトチェンジさせているなあと思ったときが多い。なので、当意即妙な受け答えは、その一端に見えるのだ。
年々、自分の、時に不安定だったりする足場での杖や、セーフティネットの役割こそが知性だと思うようになってきた。たとえ不測の事態が勃発しても、一時期はどんなに落ち込んでも、少しずつ日常を取り戻せる力こそ、頭のよさ由来ではないかと、この夏以来、なかなか日常を取り戻せない私は思ってしまうわけである。
難しいクイズなんていくら答えられても、生きていく力に直結しなきゃ屁だ。
…などと暴言を吐きつつ、東大王で、ごくごく稀に、自分が東大猛者チームより先に回答できたときは、夫に誇示しまくり、自分で自分を褒めちぎっている。ひとりで見ていた日にはその不運を悔しがり、誰かにメールしようかと思うほどだ。しないけど。
…矛盾もまた知性(大嘘)。
by月亭つまみ
◆木曜日のこの枠のラインナップ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが…】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」