【月刊★切実本屋】VOL.37 いろいろ絶妙。そして4人は?
思えば子どもの頃から雑誌のインタビューや対談記事が好きだった。
中学時代、学校では洋画雑誌を読んでいたが、家では「月刊明星」や「月刊平凡」を読むという姑息なティーンエイジャーだった。ご贔屓は山口百恵。男性アイドルにはほとんど見向きもせず、百恵ちゃんのグラビアや対談などの記事をものすごく真剣に眺め、熟読していたものだった。
あの頃は、対談記事というのはリアル対談の忠実な文字起こしだと思っていたので、たとえば中三トリオと新御三家(説明省略)の新春特別対談だったりすると(もちろん全員晴れ着)、その発言数を比較して、桜田淳子は出しゃばりだな、もうちょっと百恵ちゃんにしゃべらせろよ、とか、ヒデキのこの発言は誰に言ってるんだろうか、などと本気でムッとしたり悩んだりしていたものだった。幼い。
月日は流れ、1980年代の雑誌の興味はサブカル系に。
まだA5判時代の「宝島」のロングインタビューなどを貪るように読んだ。RCサクセション、YMO、ビートたけし…など、時代の寵児の言葉は、どれも自分に向けて発信されているようにストンと腑に落ちた。もう、インタビュー記事の文面=忠実な文字起こし、と思うほど初心(うぶ)ではなかったが、当時の宝島の編集者が想定する読者層に、自分はどんぴしゃハマっていたのだと思う。だからこそ、その記事がまさに(五臓六)腑に落ちて沁みたのだ。
そんな、トリミングされていない(ような編集の)インタビューに惹かれつつ、一方で、「MORE」や「With」、「コスモポリタン」、などの女性ファッション誌のインタビュー記事も実はひそかに好物だった。
女性誌の巻頭インタビューを飾るのはたいてい、俳優であれば出演映画の封切り間近だったり、音楽関係であれば新しいアルバムをリリースしてツアー開始直前だったりという、オファーする側される側の利害が一致した人で、明らかに、大人の事情が色濃い人選だった。
そして、そこで語られるのは「過去にいろいろあったが言い訳はしない。それも含めて自分だから」や「こう見えて私、意外と庶民派です」や「好きなことしかしないで生きてきて、今ここにいます」のどれか、もしくはどれも、の範疇で、こう言っちゃなんだけれど、収まりがいいだけの浅くて薄い内容が多かった。それに対して「結局、接待インタビューじゃん」と毒つきながらも、お約束で予定調和の様式美も嫌いじゃなくて、案外楽しんでいたりしたのだった。これぞダブルスタンダード?
そして幾星霜。今、定期的に読む雑誌はないが、対談の本はわりと手に取りがちだ。
最近読んだのは、「婦人公論」での清水ミチコの連載鼎談を書籍化した『三人寄れば無礼講』。
これは、数年前に同じ出版元から出た小林聡美の『鼎談』を引き継いだ連載だと思うが、清水ミチコも小林聡美同様、同性に人気が高く、一般人の感覚を失っていない(実際にはどうかは知らない)バランス感覚に秀でたイメージで、ホストとしては磐石。ゲストの絶妙さもこれまた磐石だ。
特にどっかズレた印象の人との鼎談が真骨頂。どっかズレた人のことを魅力的な人というのではないか、そもそも、この世にはどっかズレた人しかいないのではないか、と思わせるメンツ。蛭子さん、森山良子、矢作兼、山口もえ、浅田美代子…ちょっとうっとうしそうだけど近くにいたら面白いかも、のラインナップで気楽に楽しめる本だった。
そしてもう一冊はジェーン・スーの『私がオバさんになったよ』。
スーさん、あれよあれよという間に、オバフォー世代のオピニオンリーダーの感があるが、あらためて、頭の回転の良い人だと思った。回転が「早い」ではなく「良い」だと思うのは、そこに微塵も拙速さが感じられないから。ラジオ、特に「お悩み相談」で感じるコメントの的確さ、絶妙さが活字でも健在だ。
「ああ、それそれ!私もそう思った」と感じることと、自分が同じ状況で瞬時にそれを言える(書ける)は別だなあという、あたりまえのことをしみじみ感じる。
ちなみに、今回取り上げた本は2冊とも2019年発売だが、共通の対談(鼎談)相手が3人もいる。
光浦靖子、中野信子、能町みね子。
なんか、これまた絶妙な3人。絶妙過ぎてちょっと…と思うが、なにが「ちょっと」なのかは自分でもわからない。
♪♪♪♪
そんなわけで、もうすぐ完成(予定)のZine【カイゴ★デトックスへようこそ!VOL.02】にも、カリーナさん、Cometさん、ミカスさん、つまみの4人による、みっちりした座談会が載っています。それが「リアル座談会の忠実な文字起こし」か否かはご想像にお任せします。お楽しみに!
…ところで、2人は対談、3人は鼎談、じゃあ4人はなんて言うのでしょう。…会談?
by月亭つまみ
okosama
つまみさん、こんにちは!
婦人公論の清水ミチコの鼎談、たまに読んでます。
山あり谷ありの時間を経て今がある皆さんですから、おっしゃることが深いのですが、彼女とゲストとの距離感によって、中身が無いようであるような、有るようでないようなインタビューになっていて、面白いですよね!それも構成によるのかしらん。
公共放送の某番組で、彼女がお悩み相談コーナーのMCをしているのをご存知ですか?釈徹宗さんらがレギュラーで、毎回ゲストコメンテーターが2人いらっしゃる。
たまたま見た日は公開放送で、アグネス・チャンと山田五郎がゲストでした。
就職や進学で家を出た子どもたちが相手にしてくれないという質問者さん。
子離れの時と、突き放す山田五郎の回答。
対して、質問者さんの気持ちを汲み、子どもを巻き込む楽しいイベントをすれば?と、自分ちの例をあげて、理想的なアドバイスをするアグネス。
それを聞いて、俺が子どもだったらそんなのにつきあうのヤダと、正直な山田五郎。
最後、山田五郎に「もう、台無しだよ」と突っ込む、MC清水ミチコ。
清水ミチコと山田五郎の近い距離感があってのやりとりが、場の空気を微妙にする。同時代を経てきた私たちには堪らない面白さ!その場に居たかったわあ。
もしかして四人のお名前でネットで検索したら、何やら出てくるかもしれません。
最後に。頭の回転が早いの「早い」には「拙速さ」が含まれている…目からウロコが落ちました。
okosama
あと、素人考えでは、四人だと座談会になるんじゃないでしょうか?
つまみ Post author
okosamaさん、公共放送(!)のお悩み相談、知ってます知ってます。
一度も落ち着いて見たことはないのですが、ミッチャンとお坊さんを何度か見かけてます(^O^)
アグネス・チャンと山田五郎であれば、おのずと役割が決まって、正論と本音、理論と感情、みたいな感じになるのかもしれませんね。
私も、まゆぽさんとのお悩み相談は、先に発言した方のニュアンスで、もうひとりの立ち位置や役割が決まるなあとはいつも思ってました。
アグネスと五郎と比べるのもおこがましいですが(^^;;
4人は座談会。
確かに。
okosama
つまみさん
Zineの座談会、皆さんの立ち位置が楽しみです(^^)
つまみ Post author
okosamaさん、ありがとうございます!
それぞれの立ち位置が、それぞれっぽくて笑っちゃうかも。
お楽しみに!!