帰って来たゾロメ女の逆襲⑧ ~なぜ私はそのとき喫茶店で号泣したのか、の巻~
チャイコフスキーの「花のワルツ」を聴くと、私はなぜか「掃除機でもかけるか」という気分になります。
掃除に対するモチベーションが上がらない場合はこの条件反射(?)に頼ります。
仕事に行くのがかったるい日の最強通勤B.G.Mは高中正義の「JUNGLE JANE」というアルバムです。
他には、グノーの「アヴェ・マリア」を聴くと人間として正しく生きなきゃと思うし、ヘンデル「私を泣かせてください」では過去のせつない恋を思い出し睫毛が震えます(と一応言ってみる)。
主観、あくまでも自分だけのイメージです。
それでも、スポーツ選手のレース前の耳イヤホンの例を出すまでもなく、音楽の「気分の後押し」または「気分転換」効果はスゴイ!と断言してしまいます。
ところで
以前、夫がDVDで『地獄の黙示録』を見た後しばらくの間、この映画に使われたワーグナーの「ワルキューレの騎行」が我が家で頻繁にかかっていた時期がありました。
「ワルキューレの騎行」、ご存知ですか?
これを聴くと、私は気持ちがざわざわします。
不安と興奮が入り混じった気分になるというか。
なので、自発的に気合を入れて聴くならいいけれど、不意に聴かされたくはない曲です。
ましてや、「さてと、これからうたた寝でもしようか~」というタイミングに、突如このメロディに登場された日には、「こんなことをしてる場合じゃない!」とむくっと起き上がることになり、かといってその先にするべきことは思いつかず、「振り上げた拳の下ろし方をわからない人」のような状況になるわけです。
実際、なりました。
自分の状況に合わない音楽を聴かされるのは落ち着かないものだ、というあたりまえの事実を再確認しました。
一方で、シチュエーションと音楽が度を超してシンクロをするのもなかなか貴重な体験です。
今から10年以上前ですが、喫茶店で乃南アサさんの『涙』という長編ミステリー小説を読んでいたときのこと。
物語は終盤、まさに佳境でした。
店にはクラシックのB.G.Mが流れていましたが、それがチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」になりました。
弦楽セレナーデ?どんな曲だっけ?とお思いの方には、「上司に恵まれないあなたへ」というコピーでおなじみの派遣会社のCMの曲、と言った方がわかりやすいかもしれません。
とてもドラマティックな曲です。
壮大だけど物悲しいメロディ。
店内に「弦楽セレナーデ」が流れたとき、『涙』の物悲しさもまさに最高潮でした。
両者があまりにぴったりと共鳴し合ったために、何が起こったかというと・・私はタイトルどおり、涙涙になりました。
けっこう本気で泣いてしまった。
今ではもう、『涙』の内容も、どこの喫茶店での出来事だったのかも忘れてしまいましたが、とにかく、自分が人目も憚らず号泣したという事実、「音楽の力ってすげー!」と思ったこと、は今でもよく覚えています。
書店やCDショップ(ワタシ的にはレコード屋さん)の平積みの台にお薦めの手描きPOPが珍しくない昨今ですが、いっそのこと、ふたつを本格的にコラボさせてみるというのはどうでしょうか。
村上春樹御大の小説が出ると、そこに出てくる曲がすぐにリスト化され、CDショップ(ワタシ的にはレコード屋さん・・しつこい)に並ぶご時世ではありますが、もっと庶民目線(?)で遊び心満載の「○○という小説の△ページを読むときは××という曲がイケますぜ、ダンナ」みたいなコラボレーションの提案です。
もちろん、クラシック限定ではありません。
オルゴールでも効果音でもなんでもあり。
そんなの邪魔!よけいなお世話!という反対意見もありましょうし、言い出した自分も案外そう思うのかもしれませんが(無責任)、もし世の中が本気で「読書離れ」を憂いているのなら、一度「本を読むということ」についての固定観念を解体して遊んでみるというのも一考かな、と思った次第です。
これがホントのターヘルアナトミア、解体新書!・・なんちって。
でもまあ、そうなると、私のミステリー系の小説に対するセレクトはなにかと「弦楽セレナーデ」になってしまうような気がします。
これもある種のトラウマ!?
By月亭つまみ
こんなブログをしています。正体不明な女二人のブログ。 お昼休みなぞにのぞいてみてください♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
Tomi*
つまみさんって、本当に面白いなぁ…
私もそんな面白い人になりたかったです。
クラシック音楽に詳しくはないけれど、こうやって聴いてみると「やっぱりいいなぁ」って思いますね〜♪
「アヴェ・マリア」はグノーが一番好きです。
この記事を読んで、遥か昔の思い出が蘇りました。
中学校の音楽の時間、音楽室でサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン 」を鑑賞していた時、胸がキュウっと苦しくなって、涙が流れました。
自分でもビックリだったけど、多感な年頃だったから好きな人のことでも想ってたんだろうなぁ…(*^o^*)
老眼が進む一方で、活字が辛くなってすっかり読書から遠ざかっています。トホホ…
つまみ Post author
Tomi*さん、ありがとうございます。
面白いっていうか・・・大人げないですよねーわれながら(^_^;)
今回、セレクトしたラインナップでもおわかりのように、私もクラシック音楽に詳しくありませんが、聴いて「その気になる」のは楽しいです。
ああ、中学の音楽の思い出、わかります~。
私もペールギュントやモルダウとか、今もしっくりします。
私も授業でクラシックを聴いて気持ちが持って行かれて、泣きたいようなせつないような怖いような心持ちになって動揺したことがありましたっけ。
多感、ってことですよねー、やっぱり。
私には7才年上の兄がいて、小学生のときからなかば強引にクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(ニール・ヤングがいたグループです)やcream(エリック・クラプトンがいたグループです)やクラシックを聴かされました。
そのときは「うるさいなあ」とか「百恵ちゃんのレコードを聴きたいからたまにはステレオを貸してほしい」と苦々しく思ったりもしていましたが、今、古いロックやクラシックを聴くと「タイトルは知らないけれど子どもの頃によく聴いた」と懐かしく思うことが多いです。
兄は7年前になくなりましたが、最期まで音楽の趣味は変わらなかったです。
もうすぐ、自分は兄の亡くなった年齢になります。
いまだに、入院中によく兄が聴いていたニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」を聴く気になれない自分がいます。
兄は、Tomi*さんが今お住まいの土地の大学に行きました。
地質の勉強をしてました。
よく話を聴かされたので、一度行ってみたいものだと思いながら、まだ実現していません。
あらま、ウェットな話題になってスミマセン!
sprout
言い出した自分も案外そう思うのかもしれませんが(無責任)
↑
うけた。無責任過ぎ(笑)
ご存知のとおり、わたしのお仕事ソングの多くはSF映画のテーマ曲でしたが、「ワルキューレの騎行」、これまんまスターウォーズに使えますね。
ていうかSF映画はワーグナーに影響され過ぎです。だから私のお仕事スイッチはワーグナーだったんだ!すごい。気付かせてくれてありがとう!
職場の通信でそういう特集もやりたかったねーーーー。
マンガですが、中学生のときに突如昔のマンガブームがおこり、「ベルサイユのばら」にはまってまさに佳境!って部分(アンドレが死ぬとこ)を読んでいたとき、ちょうど聴いていたのが暗くてドラマチックなことでおなじみの、かの有名な「アルビノーニのアダージョ」で、妙に盛り上がって感動したのを覚えています。
当時、パッヘルベルのカノンとアルビノーニのアダージョのセット(?)がはやっていたんだよね。はやりってのもおかしいけどさ。
弦楽セレナーデもけっこういけますね。白眼、顔に縦線、ザーン!!って感じで。
つまみ Post author
sprout殿
平成の無責任女と呼んで下さい(笑)
☆☆
仕事中に同僚の歌を聴いたり、自分で歌えたりしない職場は味気ないです。
ま、それがふつう、とも言うけれど、遠くに来てしまったなあ、と。
そう思うときのBGMはシューマンのトロイメライかなあ。
☆☆
なるほど!
SF映画はワーグナーに影響され過ぎですか!
いっそのこと、まずワーグナーありき、でSF映画を作ればいいのにね。
もうやってたりして。
みーる
えへへ、登場。
わたしは完璧に【時代】中島みゆき です。
sprout殿が煮詰まると回るー回るーと歌いだしていたのですよね。
それから後、煮詰まると歌うようになりました。すっかり困ったときの中島みゆきです。
あ、あと、小さいころ貰った宝石箱が【追憶】だったので、
あの切ない音色を聞くとどきどきします。【オリーヴの首飾り】とかも然り。
日本全国共通の、運動会の曲、あれはきっとみんな走り出すに違いないと思います。
なんだっけ、運動会の曲の名前。ラデッキー?
つまみ Post author
コメント、ありがとうござります。
時代!
私にも特別な歌です。
この前、NHKのSONGSで時代を特集してましたね。
歌手ではなく歌で30分って初めてだったような。
八神純子が歌ってて、「この人、歌うまいんだなあ」と
あらためて思いました。
「歌える職場」、楽しかったなあ。
ラデツキーとか天国と地獄とかクシコスとか、もうそれを聴くと
運動会しか考えられないって曲、っぱいあるね。