桜の下、草葉の陰
今年も桜のお花見を兼ねて春の墓参りをしてきました。夫実家のお墓は桜で有名な広大な都営墓地にあります。夫が亡くなってからは秋の命日ごろと桜の咲くころに、私の両親と3人でお参りするようになりました。
若く夫を亡くしたのに年に2回しかお参りしないのかと感じる方もいるかもしれませんが、墓地が広大(墓地の中を一般交通機関のバスが通るしバス停もあるのです)で木々が生い茂っているため、こんなおばさんでも残念ながら独りだと様々な犯罪に巻き込まれる恐れがあるので、独りでお参りは出来ません。
そして今年も満開の桜の下、夫実家のお墓ではなく「隣のお墓」の篠竹をワシワシと刈りました。夫実家のお墓は私たちが半年に一度のお参りの度に草むしりと強力除草剤「ネコソギ」をまき散らしているのと、義弟家族、義母と義妹夫婦、私と両親の3チームが別々にお参りしているので比較的手入れがされています。
一方両隣のお墓はほぼ無縁墓状態で、右隣は篠竹が左隣はススキがボウボウに生い茂っていて、夫実家のお墓は常に両脇からススキと篠竹の攻撃を受けていたのです。ところが今回半年ぶりにお参りしてみたら、左のススキのお墓は墓じまいをしていて更墓地になっており、ススキの代わりにアザミが生えていました。
そんな話を職場でお昼の休憩の時に何気なく話したら、その場にいた20代後半から40代の4人全員がお墓のことで不安を抱えていたのです。みんなまだ若いのにマジでびっくり!少子化の波がこんなところにも。
40代の2人は偶然にもそれぞれの義父がお墓を作りたいと言いだしていて、でもどちらの家も遠い将来相続する孫がいなかったり、いても管理をさせるのが大変だから不要なのにとため息。
30代の子は自分の実家のお墓が電車とレンタカーを使わないといけない場所にあり(そういえばお土産を頂きましたよ)、もう今すでに大変だから何とかしてと両親に話しているそう。
20代の子は最近祖父が亡くなって、祖父の面倒を全然見なかった伯父さんが急にお墓がないとかわいそうと祖父のお墓を建てようと言い出して、伯父さんには子供がいないので最終的には彼女が引き継ぐことになってしまうからと、現在母親が頑張って反対してくれているとのこと。
私の場合も義父が亡くなった時に義母が私のほうが早く亡くなるだろからと、義母をスキップして夫がお墓だけを相続したら、義母より先に夫と義弟がたて続けに亡くなってしまったという状況。
都営墓地の管理費なんて年間3千円ちょっとなので負担というほどのものではないのですが、このままにしておくと私が亡くなった時に私の妹やその子供たちが、妹たちにとっては赤の他人のお墓を相続することになってしまうのです。
ちなみに私はこのお墓に入るつもりは全くなく(夫よゴメン)自分の両親と一緒にどこかの集合墓地に入るつもりです。両親は私の結婚が決まった時点で自分たち用に購入してあった墓地を手放しています。今となっては私たち姉妹にとって有難い。
以前、趣味が高じて不動産売買を始めた知人が「不動産はババ抜き」と話しているのを聞いてなるほどな~と思っていましたが、今の時代はお墓の相続も場合によってはババ抜きみたいなものかも。
不動産と考えると親の死後、実家をどうするのかと似ているような気がします。相続するにもあまりに不便だったり遠方で値が付かないような土地をどうするのか。まあお墓には売買益や収益性を求めませんが。
いやだからこそ強い気持ちがないと維持していくには難しいのかもしれません。世代はどんどん変わっていくまたは途絶えてしまう、都会に出ていく場合さらには海外に出ていく人もいる。
お墓を立てるのは家を建てたりマンションを買うよりずっと安く簡単にできるけど、墓じまいはかなりのお金がかかる場合や、手続きやら何やらで大変らしいから、その先の将来まできちんと契約しているものでないと特殊なタイプの「負動産」になってしまいそうです。
両親が隣のお墓の篠竹やアザミを刈ったり抜いたりしている跡を片付けて、管理する人がいなくなって雑草がまだ茂るお隣のお墓にもお線香を少しだけ分けながら、「草葉の陰で泣く」ってこうい事なのかなと思いながら、自分の老後とお墓について改めて考えた春の墓参りでした。