さて、いくらで売っているのだろう。
フリーランスになって、しかも書き仕事が中心になって、必需品となったのはノイズキャンセリングのイヤホンである。これがないと、隣のおばちゃんの面白い会話や、通り過ぎて行く親子連れのアホな会話が耳に入って仕方がない。このコラムのネタが探しにはいいのだが、社長の話をまとめたり、企業のブランディングのストーリーを書いているときには、やっぱり静かな環境でないと気が散って仕方がないのである。
そこで、ノイズキャンセリングのイヤホンだ。なんとなく、ヘッドフォンのほうが耳全体が覆われて遮音性がいいように思われるかも知れないが、イヤホンの方がいいのである。なにしろ、耳栓のような状態になるから。そんなわけで、イヤホン型のノイズリダクションを買うのだが、これが高い。本当に高い。AirPodsProは公式サイトで39800円もする。約4万円ですぞ。ソニーのノイズキャンセリングがよく効くと言われているWF-1000XM5というのは公式ストアで41800円ですぞ!
まあ、最初は「そんなに金がかけられるかよ!」と思っていた僕ではあるが、静かなシェアオフィスを借りているつもりになれば、安いもんだよ、と数年前にソニーのWF-1000XM3と言うのを買ってみたのである。いまのWF-1000XM5の二世代前のやつだ。ちょうどWF-1000XM4というのが出るというので、このWF-1000XM3というのがたたき売りされていたのである。ヨドバシカメラで。いくらだったかなあ。たしか定価が26000円くらいだったのが、2万円くらいになっていたのだ。「どうしようかなあ」と思っていた僕には渡りに舟である。試しに買ってみようと、「く、く、ください」と緊張しつつ手に入れた。
そしたら、いいのさ。ノイズキャンセリングが。そこそこ静かになるのさ。でもね、めちゃくちゃ静かになるってわけではなく、隣でおばちゃんが喋るとなんとなくは聞こえるのよ。で、ノイズキャンセリングの良さを一度知ってしまうと、その後、ノイズキャンセリングを渡り歩く羽目に陥ったのである。現在はAirPodsProを普段づかいして、ここぞというときにはノイズキャンセリングの最高峰と言われているBose QuietComfort Ultra Earbudsというのを使っている。こいつは、某ポイントが知らぬ間にたまり、失効する前にということで買ったのだった。
ということで、いま僕のノイキャン生活は快適である。特にBOSEはやっぱりすごい。隣の会話もほぼ聞こえなくなる。ただ、iPhoneとの相性はというとAirPodsProに軍配があがる。ま、そんな具合でとりあえずノイキャンを探し求める旅はいったん終わっている。めでたしめでたしである。
しかし、ここで2万円もはたいて、いちばん始めに手に入れたWF-1000XM3が宙に浮いている問題が浮上する。使わないモノを大事に置いておいても仕方がない。というわけで、チェーンのリサイクル店に持ち込んだのだ。箱も付属品もきれいに揃っている。製品に不具合もない。2万円で買ったが、定価は26000円である。買ってから3年ほど経ってはいるが、丁寧に使っていたのでなかなかきれいだ。傷もない。
こいつを店頭に持ち込むと、係の若い女性が「20分ほどお待ちください」と言うので、うろうろしながら待った。待っている間、チラチラ見ていると、耳に突っ込んで実際に接続されるのかどうかを確認したりしている。そして、20分後にカウンターに行くと「2500円で買い取らせていただきたいのですが」という。2500円なのか!?5000円くらいにはなると思っていたのに。「どうでしょうか」とたたみかけられて思わず「5000円にはならないですよね」と言ってみたが、ほんのり笑われて、「うちでは2500円が限界ですねえ」と言われる。
というわけで、僕の初めてのノイズキャンセリングイヤホンは2500円で、リサイクルショップのモノになったのである。さて、それからだ。それがいくらで売られているのか、気になって仕方がない。近所のショッピングモールにリサイクルショップが入っているので、ついつい見に行ってみたくなる。みたくはなるが、5000円で売られていたら、なんだか損をした気になってしまうし、3000円だったら、お店の利益は500円で大丈夫?と言いたくなってしまう。ということで、気になって気になって仕方がないのに、そのリサイクルショップにはそれ以来、足を踏み入れていないのだ。
あれから1ヵ月。とりあえず、半年は見に行かないつもりである。しかし、半年しても売れ残っていたらなんだか残念だし、もしかしたら半年しても見に行かないかもしれない。いやまあ、こんなにソワソワするなら、売らずに手元に置いておけば良かったという気もしないではない。ノイズキャンセリングなのになあ。余計な雑音が増えた気がするなあ。
植松さんのウェブサイトはこちらです。お問合せやご依頼は下記からどうぞ。
植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。