帰って来たゾロメ女の逆襲⑲ ~人生にローリスクでハイリターンはない、の巻~
20代の頃に働いていた会社に自称「整形評論家」がいました。
彼女・・Yさんは「整形をした顔(特に目)はゼッタイわかる!」と豪語し、アイドルや女優を微に入り細に入り鑑定していました。
まだ昭和で、整形する人の数は今より少なくて(たぶん)、世間の整形に対する認識も現在とはかなり違う(憶測)時代でした。
当時私は、Yさんの鑑定にいちいち驚き、でも鵜呑みにするわけでもなく、眉に唾をつけながら同時に食いつくという、かなり複雑でファジー(死語)な反応を示していました。
時は流れ、平成もまもなく26年になろうとする現在、気がつくと、タレントの顔に少しでも違和感を覚えようものなら、男女を問わず自動的に施術の有無を素人鑑定している自分がいます。
そして「これは直してるね」とか「目頭切開をやり過ぎてもはやキズだ」などと口に出し、夫に「そこは見逃さないよねー」と感心・・じゃなく、呆れられています。
「そこも」じゃなく「そこは」に
ふだんはうすらぼんやりして
部屋のホコリとか
支払期限が迫った請求書とか
賞味期限がきた食材とか
とれかけのボタンとか
壊れかけのradioとか(それはないか)
人の微妙な気持ちとか
人生のあれこれを見逃しまくっている妻なのに!
・・という夫の深層心理(深くもないけど)が透けて見えるような気がします。
Yさんは、とっくに音信不通になっている人間に、自分がいまだ影響を与え続けているなんて想像だにしていないでしょう。
なんか悔しい。
そして、下世話過ぎるぞ、自分!
ところで、整形というと、ずいぶん前に読んだ『整形美女』という小説のことを思い出します。
美人の甲斐子と不美人の阿倍子が出てきます。
摩訶不思議な名前の出典はカインとアベルだと思われます。
甲斐子は阿倍子のような地味な顔に、阿倍子は甲斐子のような美人に、整形します。
双方とも「モテたいため」「幸せになりたいため」の整形です。
阿倍子の動機は一般的ですが、甲斐子のそれは屈折していて、世の常識をあざ笑うかのような、世間の価値観なんかあっけなく反転してしまうことを示唆するような、こちらを不安にさせる不穏さがあります。
でも妙に切迫感というか説得力があってそこがまた恐ろしい。
姫野カオルコさんの小説ですから、ある程度覚悟しつつ読んだはずですが、ちょっと難解で、でも通俗的でもあり、ベタで不条理で、いろいろ幻惑された記憶があります。
細部は忘れてしまったのに、それまでの常識とか固定観念を掻き回された感覚は残っています。
自分が、顔のお直しそのものには敏感(?)なくせに、整形の是非や当事者の気持ちの領域までにはあまり立ち入る気分にはなれないのは、この小説を読んだせいかもしれません。
一度、掘り下げはじめたら元の場所に戻れなくなりそうで。
・・と、ここまで書いて、今回の文章はうやむやなままフェイドアウトだなあ・・と思いながらなにげなくテレビをつけたら、CSで『華やかな女豹』(1969年)という映画がちょうど始まったところで、つい見てしまいました。
主演は浅丘ルリ子。
腹違いの妹役が松原智恵子です。
ストーリーは正直言って退屈で、ただただ2人(特にルリ子)の美貌を見せつける映画でした。
この映画のルリ子さんはとんでもなくキレイ!
オシャレで細くて、本当にお人形さんみたいです。
場面ごとに違う衣装、異なったヘアスタイルで登場するので、まるでプロモーションフィルムを見ているよう。
この映画、クラブのママ役で弘田三枝子も出演しています。(画像左から3番目)
ちょうど、顔が変わった時期と重なっているようです。
当時、私はほんの子どもでしたが、彼女の変貌が大きな話題になったことを、うっすらと、うっすらとですが(ここ大事!試験に出ます)記憶しています。
整形についてあーだこーだ書いている最中にこの映画を見た偶然のせいか、現在私はちょっと弘田三枝子に寄り添うような気持ちになっています。
一言で言うと、「浅丘ルリ子や松原智恵子と一緒の業界にいるというのは、さぞやキツかったに違いない」。
それほどこの映画のふたりはキレイです。
罪なくらい。
やっぱり私は整形の是非はわかりません。
弘田三枝子に気持ちが寄り添った=整形肯定派に傾いた、というのでもないのです。
ますます「わからなくなってきました」。
ただ、それもひっくるめて人生に高い見返り(ハイリターン)を求めるなら高い代償(ハイリスク)を覚悟すべきであって、ローリスクでハイリターンはないとあらためて思ったことでした。
ハイリスクの覚悟が持てないあまり、「人生ローリスクでローリターン」に徹し過ぎている自分もちょっとどうかと思うんですけどね。
by月亭つまみ
こんなブログもやってます。ユルい気分のときにご覧下さい♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
はしーば
「華やかな女豹」!そそられますね〜。
深夜に何気無くつけたTVでやっていたら、見入ってしまうこと間違いなしです。
夫の石原浩二に素顔を見せたことがない、という伝説?も頷ける浅丘ルリ子の徹底した女優っぷり、今の女優さんにはない魔力のようなものが漂っていそうです。
つまみ Post author
はしーばさん、おはようございます。
「女豹」だけでも、ずいぶん派手なイメージなのに、「華やか」とは派手の上塗りなタイトルですが、浅丘ルリ子は全くタイトル負けしてませんでした。
さすがの魔力です。
2003年のドラマ「すいか」でルリ子さんは大学教授を演じていましたが、若い頃からの友達に「いいトシして厚化粧して」と言われ、「私、厚化粧だーいすき!」と応えるシーンがあり、印象的でした。
でも最近、シナリオが文庫化され、あらためてそのシーンを読んでみたところ、脚本では「化粧なんかしてないもん。これが私の素顔だもん」でした。
どちらもインパクトがありますが、ホント、ハマり役でした!