帰って来たゾロメ女の逆襲㉔ ~2013年のゾロメ女的ベスト本発表、の巻~
今年もいよいよ残り少なくなりました。
みなさん、あわただしい日々をお過ごしのことと思います。が、私はいたって通常モードです。
大掃除?なにそれ?のテイタラク。
さて、別冊の更新も年内は今日が最後です。
トリは不肖この月亭つまみが務めさせていただきます。
紅白歌合戦で言えば、北島三郎か都はるみかSMAPか、遡って昭和38年からは10年連続で美空ひばりだったらしいよ(プチ紅白トリビア)的重責を、こんな私が担ってよいのであろうか!おこがましい!と思うわけですが、考えてみる・・までもなく、単にカレンダーの順番なのでした。
たはっ。
※その後、トリではなかったことが判明。・・たははっ。
先般の【帰って来たゾロメ女の逆襲⑰】で予告前哨戦をお届けしましたが、今回、2013年のゾロメ女ベスト本を発表させていただきます。
そのラインナップは
ジャーン!
『昨日のカレー、明日のパン』 木皿泉
『残り全部バケーション』 伊坂幸太郎
『みちくさ道中』 木内昇
です。
迷いました。
前哨戦同様、順位はありません。
『昨日のカレー、明日のパン』は、ドラマ「すいか」「Q10」「野ブタをプロデュース。」などでおなじみの脚本家の初小説。連作短編集です。
若くして夫である一樹を亡くしたテツコは、一樹の父親のギフ(義父)と一樹亡き後も一緒に暮らします。
この本は、このふたりを軸に、ふたりの住む家の隣人タカラや、一樹や一樹の従兄弟虎尾、テツコの恋人岩井、ギフの亡き妻夕子などの姿が描かれます。
木皿泉の描く世界は、物理的な整合性より、その都度その都度の気持ちのリアリティに重きを置く分、シチュエーションや展開は独特だったりしますが、それゆえに一般常識とか固定観念から開放されます。
無自覚に「普通」とか「常識」という道を自動運転で走行しがちな自分ですが、「それでいいの?」と常に問いかけられているような、同時にいろんなことを赦されているような気持ちになりました。
生と死が並列で垣根なく、あたりまえの日常として描かれているのも印象的でした。
『残り全部バケーション』
これはとにかく楽しかったです。
岡田&溝口の裏稼業コンビが最高です。
そして、いつもにも増して終盤の伏線回収力が見事で、読後感スッキリ!
伊坂小説の醍醐味を満喫しました。
春に出た『ガソリン生活』も面白くて、街で緑のデミオを探すようになりました。
『みちくさ道中』は、ここ数年一推しの作家のエッセイです。
小説も凄いですが、エッセイにもガツンとやられました。
自分が常日頃うっすら感じていたものの言葉や文字にできなかったこと、そして言葉にすることを思いつきもしなかったこと、がページをめくるたびに登場して、感動したというより玉砕感を覚えました。
木内昇の書き手としての矜持というかサービス精神は、わかりやすい共感や多くの人の気を惹く、という方向ではなく、自分の中枢部を真摯に小細工せず提示することのような気がします。
要するに、歯ごたえ充分で味わい深いのです。
この本を読んだら、目に見えるものばかりに左右されるな、至近距離だけが自分の世界じゃない、とあらためて気づき、襟を正すような心持ちになりました。
それと、自分の咀嚼機能が衰えないようにしないとなあ、とか。
他にも
『ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法』 津村記久子・深澤真紀
『ならずものがやってくる』 ジェニファー・イーガン 谷崎由依訳
などが印象的でした。(50音順)
それと、⑮のコメント欄でみもりさんが紹介して下さった東直子『薬屋のタバサ』も新鮮でした。
タバサと街にすっかり幻惑されました。
㉒パラレルワールドの回でokosamaさんが教えて下さった森見登美彦『四畳半神話大系』もさっき読み終わりました。
面白かった!
同じ文脈や事象が世界によって違った印象になるのがパラレルワールドものの魅力だよなあと再認識しました。
現在、同じ回で宮木さんが推薦して下さった新井素子『もいちどあなたにあいたいな』を読んでいます。
数十年ぶりの新井素子さんです!
今、やまとばちゃんへの興味、MAXです!
そんなわけで、一気に2013年に読んだ本を振り返りましたが、今年は個人的には
長らく働いた職場、職種から離れたり
紹介してもらった新職場を早々に辞めたり
同居している姑が入院して手術をして再手術をして退院して再入院して先日やっと退院したり
父親が死んだり
癌検診に引っ掛かったり(シロと判明しましたが)
・・と盛りだくさん過ぎる1年で、くたびれること、やさぐれることも多々ありましたが、この場にはずいぶん助けていただきました。
持つべきものはやはり、現実逃避の場所です(そこかっ!?)。
読んで下さった方、コメントまで下さった方、本当に本当にありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します!!
みなさま、よいお年を。
by月亭つまみ
レオ
「一推し本」!(懐かしい)私も書きますね、
時間があって沢山読んだのですが、
すっかり忘れてます、
その中で、印象に残った本は、
花村満月「希望(仮)」です、
受験に失敗した青年が立ち直る過程の小説です、
が、満月ワールドなので、バイオレンスたっぷり、
それでも「希望(仮)」なのですよ。
月亭つまみさんも、よいお年を!
つまみ Post author
わー、レオさん、コメントありがとうございます。
一緒に一推し本を選んでましたねー。
なつかしいですねー。
花村萬月!
最近、ご無沙汰でした。
私にとっては「攻めてる」作家の印象です。
読みます読みます!
レオさんもよいお年を。
sherry
「昨夜のカレー,明日のパン」図書館に予約しました。
↑
どうでもいいことなんですが,「図書館で予約しました」って書いてから,
いや,図書館に行かないでネットで予約したのに,
図書館「で」は変じゃないかと思って,図書館「に」って直したんですが,
今度は,なんか日本語として変なような気が?
「残り全部バケーション」は,確かに面白かった!
いつもの伊坂worldが楽しめました。
年末年始の休みだからと思って,図書館から12冊も本を借りてしまいましたが,
さて,休み中に読み切れるか???
つまみ Post author
sherryさん、その「に」「で」の違和感というかこだわり、わかります!
「図書館で」というと、じかに行った感が強まりますものね。
伊坂worldってホントにありますよね。
たまにそのworld色が薄いと、小説としては面白くても物足りなかったりします。
そして、年末年始、意外と本が読めない派です。
私もいろいろ借りてしまいましたが、何冊イケルかなあ。
コメントありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
okosama
色んな事が次々と重なる年ってありますね。一年前のつまみさん、好機を逃さなかったのですね!来年も楽しみにしております。
つまみ Post author
okosamaさん、ありがとうございます。
うすらぼんやりしていても、これぞという好機は逃さないでいられたらなあと思います。
来年もよろしくお願い致します!
にこりん
おすすめ本情報ありがとうございまーす。書店で働いてますので、すべてゲットしてまいりました。年末年始ゆっくり読みます(^^)
つまみ Post author
にこりんさん、コメントありがとうございます。
3冊すべてですかっ!?
責任重大!
ぜひ感想もお聞かせくださいませ。
そして、にこりんさんのおすすめ本も教えていただきたいです。
よいお年を。
Tompei
木内昇さんの『みちくさ道中』と『漂砂のうたう』をさっそく図書館から借りてきました。慌ただしい年末年始の隙間時間に読むつもり。木内さんの本は初めてなので楽しみです。
いつも多岐にわたるジャンルの本をいろいろご紹介いただき、とても参考になります。つまみさんの文章を読むとすぐに読んでみたくなります。
印象深いのは、アブディンさんの『わが盲想』。単行本も読みましたよ。
来年も楽しみにしています。どうぞよいお年を。
つまみ Post author
Tompei さん、ありがとうございます!
これから木内さんの本と新たに何冊も出会えるなんてうらやましいです(^O^)
『わが盲想』は自分の固定観念が打破される感じで、心地よいショックの連続でした。
あれを書いたこと(3月でした)を覚えていて下さって、今コメントしていただけたのがとてもうれしいです。
励みになります!
来年もよろしくお願いします。
Tompei さんもよいお年を!
みもり
遅くなりましたが、本年もよろしくお願い致します。
2014年も更新を楽しみにしております。
私も新しい世界へ、本を通して行き来が出来ればと思っております!
新しい本に出会いたい2014年です。
つまみ Post author
みもりさん
ありがとうございます!!
今年も、どーでもいいことを随所に取り混ぜつつ(それがほとんどかもしれませんが)、本を読む楽しさを書いていきたいと思います。
こちらこそ、本年もよろしくお願い致します。