【月刊★切実本屋】VOL.5 左利きの自己弁護
真性左利きです。以前、スポーツクラブで握力を測ったら、左右の差が8キロもあって自分でも驚きました。
なんだかんだ言って、世の中は右利き中心にできているので、左利きが、本来は利き手を使うところを右でやらざるを得ない状況は、右利きの人のそれより格段に多いと思います。なのに、私の右はその逆境をバネにすることなく、右では自動改札の吸い込み口に切符を入れることすら苦手。手を交差して左で入れています。かざすだけでいいPASMOやSuica(JR東日本)が主流になってストレスが減りました。
でも、「本来は利き手を使うところを右でやらざるを得ない状況」の最たるものは、私の場合は自動改札ではありません。字を書くことです。
現在はもう「左利きの矯正」は一般的ではないのかもしれません。今、小学校の図書室で働いていますが、けっこうな数の児童が左で字を書いていますし、左利きの先生も思いのほか多いです。
1960年生まれの私は、幼稚園の先生の「小学校で書き順や習字で苦労するから文字だけは右に直した方がいい」というアドバイスで矯正しました。右で字を書く練習はかなり苦痛で、「右手と左手はまったく同じ作りなのに、どうして左ではイケナイのだろう」とこども心にも理不尽な気持ちになりました。
矯正したのは字を書くことだけで、同じくペンを使う、絵を描くこと、線を引くことは左のままです。右手じゃ、ちまちましたぬり絵はできません。
高校生のときの試験で、鉛筆を両手に持って、右で字を書き、左でマークシートを塗りつぶしていたら、隣の席の男子に「なんか、ずっけぇ(ずるい)な」と言われました。私からみれば、鉛筆を持ち替えずに同じ手で文字と線と○と塗りつぶしができる人の方がよほどずっけぇ、なのですけれど。
そんな人生を半世紀以上やってきたわけですが、ここであらためて声を中ぐらいにして表明したいのは、文字は右で書いていても自分が左利きだという事実は変わらないということです。右利きになったわけではないのはもちろん、両利きでもないのです。
右利きの人がある日、「今日から字は左手で書け」と言われ、理不尽だと思いながらもなんとか書けるようになった…。ね、これって両利きとは違うでしょ。だから「えっ?字は左で絵は右?!両方使えるなんて器用!」などと言われても困惑するばかりなのです。いや、ほんとに。
さて、今回の本題は「左利きの理不尽な日々」ではなく(ないんかいっ!?「表明」までしといて)、 『字が汚い!』(新保信長/著)という本についてです。
著者はある日、自分の手書き文字の拙さに軽く絶望します。そして自分はこどもの頃から「字が汚い」と言われていたことを思い出し、字の練習のみならず、字を書くこと全般に思いを馳せます。この本は、2015年まで発行されていたノンフィクション専門雑誌「季刊レポ」連載の書籍化です。
拙い字を書くことにかけては人後に落ちない私は、著者にシンパシーを覚え、興味深く読みました。切り口もどれも面白く、特に、第3章の「字は人を表すか?」はツボでした。石原慎太郎と中上健次の手書き原稿、そしてあの稲田朋美氏の書いた「内閣人事局」という字に唖然とし、文中で言及されている木嶋佳苗の字を彼女のブログで見て、あらためて自分がいわゆる「美文字」にさほど魅力を感じないことを再確認しました。
やっかみに聞こえるかもしれませんが、「字は人を表す」が国民の総意っぽくなることにはちょっと抵抗があります。もちろん、美しい字が書けるのは素晴らしいことですし、読みやすい字を心がける「性根」のようなものは否定しませんが、今までの人生で「きれいな字を書くイヤなヤツ」もいっぱい見てきたし、その逆も然り。
字と人柄(人間性)をあまり直で結びつけられ、判断されるのはなんだか息苦しいです。
個人的には、ソツがなさすぎたり巧さを誇示するような字より、どこか無造作で無防備な、スキのある字の方が好きです。
私の字は、男っぽい、自己流、丸味がない、濃淡がありすぎ…などと言われます。上手いと言われたことは一度もありません。(キッパリ!)。そして、道具(ペンや紙)や状況で字の出来が大きく違う(なんなら、他の人より)と思っていて、それもこれも「もともとは左利きだから」を理由にしているところがあります。
半世紀も右で書いてきて、われながら「いまさら何言ってるんだ?」ですし、そう言って人に失笑されたこともありますが、そうでも思っていないことには、年賀状や芳名帳は書けません。いわゆる、自己防衛機能の発動ってやつです。
そんなふうに私はこれからも、強気になったり弱気になったり、開き直ったり恥ずかしがったりしながら、右手で拙い字を書いていくのでしょう。こんなはずじゃなかった、などと思いながら。
でも、この本を読んで、「流麗、達筆じゃなくてもいいので味のある字が書けるようになりたい」という気持ちは強まりました。いろんな字を見て劣等感も少し弱まったかもしれません。実は今、細々と字の練習をはじめました。
そういう意味でもこの本は素晴らしいテキストだと思います。
by月亭つまみ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4、5木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 ゾロメ日記】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
perako
私は右利きですが、芸能人の方って左利きが多いですよね~
CMとかでも、左手にお箸持っている方たくさんいますね。
私も字は上手ではないですね(下手ではないと思うけど)
自分なりに丁寧に書いた文字に、「だれ~~書きなぐった人は!」と職場で言われたことあります(^_^;)
筆圧が濃くて、「とめ」が苦手なんです、、、
〇ーキャンでペン字をやってみましたが上達せず、、、今では「個性」として受け入れています。
アメちゃん
私も左利きです。
私の場合は、ボールを投げる、マウス操作、(弾かないけど)ギターは右で
あとは左です。
自動改札。
そうですそうです!左手を交差させて切符入れます!
自販機のお札入れるとこ、急須、定規の数字の並び、電車の連結部の引きドア……。
ほんと、世の中は右利き中心にできてるなぁって実感しますね。
私もこどもの頃に、字を書くのを右手に矯正させられて
大学生まで右手で字を書いてたんですけど
社会人になって、板書の機会がなくなり
絵を描いたりなんかのほうが多くなったら
いつのまにか、字も左手に戻ってしまいました。
芳名録とか筆ペンは困りますよね。右手でムリヤリ書いてるかな。
私の字は、サインペンだとコロコロころがったような、楽しい字になるんですけど
ボールペンはニガテなので、もんのすごく下手くそな字になります。
クライアントに領収書を書いて送るとき
「小学生の字みたいなのは、左利きだからなんです!しかもボールペン!」
って言い訳したいといつも思います。
つまみ Post author
perakoさん、こんばんは。
芸能人、やっぱり左利き率が多いのでしょうか。
スポーツ選手は有利だと言われますよね。
私は以前、テニスをしていて、突然となりのコートの上級者のオバサマから「もー!せっかく左利きなのにテニスに活かされてない!もったいない!」と言われたことがあります。
思わず、すみませんっ…と謝ってしまいましたが、んなことを言われても。
私も筆圧が強いです。
一度、初対面の人に「もともと左利きの人が右で書いた字」とドンピシャで当てられてびっくりしました。
つまみ Post author
わおー!アメちゃんさんも左利きでしたか!
私の場合、右は、文字を書くこと、包丁、ハサミ、マウス、以上!です。
物心ついてから使うようになったものは意識して右にしました。
マウスは左の方がラクなのですが、自分のパソコンだけならまだしも、いろいろな場所で使うことを考えると、右で覚えておかないととても不便ですよね。
電車の連結部分の引きドア!確かに確かに!
不自然にズラす、みたいな感じになりますよね。
それと、意外にものすごく不便なのは、ファミレスやビュッフェなどの、自分ですくうタイプのスープのオタマ。
こぼれないように注ぎ口ができてますが、あれ、左ではものすごくやりづらいです。
それにしても、左手に戻ったってスゴイ!
その手があったか(←文字どおり)と驚きました。
たまに左手で字を書きますが、矯正以前で止まっているせいか、まるで幼稚園児みたいな字になります。
ただし、ムダに力強いです。
カミュエラ
以前、全体の16パーセントの人が左利きで生まれると聞いたことがあります。これがほんとだとすると6人に一人は左利きのはずですが、実際はそんなには多くないような気がします。
やはりつまみさんのように矯正する人も多いのかもしれませんね。
うちは義父、夫、長男と見事に遺伝で左利きです。義父がつまみさんと同じような感じで両手を使い分けています。字を書くのだけが右手、あとはほとんど左です。
夫と長男はすべてを左でやっていて、普段の生活で困っている様子もないのですが(私が気付かないだけかもしれません。)包丁を持たせた時だけは見てるこっちがなんだかとても居心地の悪い気持になってしまいます。
字と人柄は結び付かないと私も思います。
友達にお坊さんがいますが(とてもいい人です)人並み外れて字が下手くそです。職業柄いかがなものかと思うくらいです。本人は直す気はないらしいのでしょうがないですけど。
私の夫は呪いでもかけられてるようなちょっとおどろおどろしい感じの字を書きますが、普通の人です。(笑)
上手な字ももちろんいいですが、手紙をもらった時に、宛名の字を見ただけで送り主がわかる筆跡、いつもいいなと思います。友達の数だけ個性的な筆跡がすぐに頭に浮かんで、これって上手下手に関係ないとてもすてきな個性に思えます。
ふぇんふぇん
わぁ!私も左利きです!そしてこの本興味あってアマゾンの欲しいものリストに入れてました!なぜなら字がめっちゃ汚いので(汗)どれくらい汚いかというと、学生からのアンケートで「先生の字が汚い」と書かれたことがあるくらい(爆)
私はお箸と鉛筆は幼き日に母に矯正されましたが(女の子だからお茶やお花をやるときに左だと全部困ると思ったようです)それに関係ないこと(包丁、ハサミ、針、ラケットなど)は左です。でも今気づいたのですがマウスは右だなぁ。
注ぎ口のあるレードル!ずっとうまく注げないなぁ私不器用だなぁと思いながら使っていたのですが、お料理教室でそれは左利きだからだよ、と言われて目から鱗でした!っていうか気づくの遅すぎですが(笑)私が不器用だと思って生きてきたのは、左利き要因が半分くらいはあったのじゃないかなぁ?と思う今日この頃です。
じゆん
こんにちは。
時々「カレー記念日」に顔を出しております、じゆんと申します。
左利きで盛り上がっているのでやってきました。私も左利きです。
私は、箸、鉛筆、ハサミは左で、
大人になってから初めてバッティングセンターでバットを構えたら
ナチュラルに左打者で、なんかちょっとかっこよかったです。
全然ボールには当たらなかったけど。でも右で構えると、バットを振ることもままならなかったです。
で、包丁、マウスなど、つまみさんと同じく物心ついてから覚えたものは、だいたい右です。
注ぎ口のついたおたま、わかります・・・。あれ余計ですよねぇ。
本題の文字ですが、字の大きさ、筆記用具などで多少違いますが、
矯正なしの左のままで汚いです。(きっぱり)
そんな私の言い訳は「文字って左で書くようにはできていない」です。
でも一応社会人なので、せめて丁寧に書くようには心がけていますよ。
私の字を他の人がどう思っているのかは聞けません。(汗)
桜子
こんにちは~!ツイッター中の人ではしゃべり足らない(笑)
私は、お箸と字を書くのは子供の頃に矯正されて右、
マウスはおそらく最初に覚えた時に右にセットされていたのでしょうね、右です。
鋏や包丁、ラケットの類は左、塗り絵は両手、スプーンやフォークもどちらでも大丈夫です。
ファミレスのお玉(レードル)は上手く使えないし、急須はデザインを選んで買いますね。
鋏は、右利き用の鋏を左手で使うのに慣れていて
子供に買った左利き用の鋏は上手に使えませんでした。
ピアノを長くやっていましたが、右左バランス良く使う練習になっていたかもしれません。
今どきは矯正しない場合も多いですが、息子は字だけ右手にさせました。
世の中全般ももちろんですが、字も右手で書くように出来ているので
左だと損するような気がしたんですよね、、、。
で、これが驚くほど汚い。というかバランスが悪い。
答案読んでもらえないんじゃないかと心配になるくらい、汚い。
私は同じ矯正して右でもそこまで汚くないので、
右利き左利きの問題というより、もともとの器用さが原因な気もするのですが
なにせ矯正させたのが私なので、左で書かせていたらここまで汚くなかったのかなぁとか
気になってしまうわけです。
人柄と字は結びつかないと思いますけど、あれ、どうして結びつけちゃうんでしょうね。
最近は手書きの文字に接する機会が少なくなっていますけど
「うわ、汚ない」って思われるよりは、思われない方が良いかなぁとは思います。
というわけで、ご紹介の本、読んでみますね~!!
つまみ Post author
カミュラさん、こんにちは。
16パーセントですか。
そんなに?!なのか、そんなもん?なのか、だんだんわからなくなってきました(笑)。
しつこいですけど、同じ作りなのにどうして右利きが一般的なのでしょうか。フシギですよねえ。
右脳左脳の関係なのかもしれませんが、それでもやっぱりフシギです。
ちなみに、私は包丁は右ですが、以前、義母に「つまみちゃんは左で包丁を持つからハラハラする」と言われ、えっ!?と。
お義母さん、私、包丁は右だよ右!
利き手じゃない感がにじみ出ているのかも(ただ、包丁を使うのが下手なだけかもしれません)。
>呪いでもかけられてるようなちょっとおどろおどろしい感じの字
失礼ながら、笑ってしまいました。見たいです!
そして、字を見ただけで知人の顔が浮かぶって、あたりまえのことのように思っていましたが、確かに字の個性で判断しているわけで、皆が皆、お手本のような字を目指す必要なんてないなあとあらためて思いました。
つまみ Post author
ふぇんふぇんさん、こんにちは!
おおっ!ふぇんふぇんさんも左でしたか。
左利きって、みなさん、左右が混在してるんですねえ。
私も、針は一応、右でやっているものの、厚い布とかだと右で抜けず、左も使います。
レードル(というんですか、あれ)は、私もしばらく、どうして自分は上手く注げないのだろうと思っていました。
そうそう。右利きの世の中なので、左利きはどうしても不器用なポジションに落ち着きますよね。
なのになぜか、「左利きは器用」的な言い伝え(?)もあって、ぐいぐい言って来る人がいて、うっとうしいったらありゃしません!
つまみ Post author
カレー記念日のじゆんさん、存じ上げておりますとも。
こちらにもお越しいただき、ありがとうございます。
大人になられてから左打者に気づくって、なんかすごい。(byはらぷ)です。
私は小学生ぐらいからソフトボールが好きでしたが、たいした打者でもないのに、左のバッターボックスに入ると一目置かれて、それは確かにちょっといい気分でした。
バッティングセンターは、左のバッターボックスが少ないので不満だったりしますが、やっぱり構えると、「おっ!」とか言われますね。
私も「文字は左で書くようにはできていない」と思います。
私の場合、文字は右になって久しいですが、左手で書いている人を見るたび、ずっと頑張っているのだなあとエールを送りたくなります。
つまみ Post author
桜子さん、Twitterもコミでありがとうございます。
わおっ!
ホント、左利きの左右の使い分けは人それぞれですなあ。
今回の数々のコメントでも、全く同じ人はいませんね。
私はハサミは右ですが、その「右利き用を左で使うのに慣れる」ってわかる!
缶切りとか、そうです。
周囲には、ヘンな使い方をしてやりづらそうと言われますが、慣れているので意外と平気です。
私も十年ぐらいピアノをやりましたが、よく「伴奏の音が大きい」と注意されました。
バイオリンは、左で弦を押さえる方が左利きには理にかなっている気がします。
あ、弓の持ち方が安定してないと言われたのは、利き手じゃないから?!
今、腑に落ちました(ただの言い訳)。
器用不器用もあるかもしれませんが、身体の中心の体幹のほかに、右の幹と左の幹があるんじゃないかと思うときがあります。
同じ左利きでも、幹がはっきりしてる人は矯正しづらいのかな、とか。
完全に自分だけの論理(^^;
字のキレイな人はちゃんとしてる印象を持たれますよね。
本人も、その気になってたり(完全にやっかみ)。
でもあれ、そんなことないですから。
しかし、「美人はちゃんとしてる」なんて特に思われないのに、なんで字がキレイな人はそう思われるのかな。
論旨が激しくズレちゃってますけど、やっぱり大事なのは漂う清潔感ですよ。
私、今日から清潔感のある字、めざします!(極論)
ジャスミン
私 字が汚いです…
通信教育、2回ぐらいしたかなぁ。大人になってから習字を習ってたこともあるし
ペン字練習帳も何度買ったことやら。また最近、ペン字練習帳をやりだしたけど
時々しかやってないです(+_+)
見た目とか歩き方とか、美しくしようと努力して何とかしてきたけど、字だけはダメ(T_T)
全然美しくなりません…
手書きPOPは、味がある感じで書けるけど、正式の書類は泣きたくなる~
キレイな字の人が、羨ましい限りです
つまみ Post author
ジャスミンさん、こんばんは。
字、見た目、歩き方、三重苦のくせに、全てに対して努力を怠ってきた私。
ああ、ナンタルチア!
ジャスミンさんは偉いっす!
『字が汚い!』には、ペン字練習帳のこともけっこう載っています。
もしご覧になる機会があれば、参考になさってください。
そういえば、手書きPOP的なものを書くときは、無意識に「描く」にシフトチェンジするのか、左手で書いたりしてます、私。