◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第6回 仕事なんて密かにアレしてナンボだ
正規・非正規を問わず、給料が発生する仕事をかれこれ40年近くやってきましたが、終わりが見えてきました。自己都合、他己都合(雇用形態の大幅な変更や民営化)で、いくつもの職場を渡り歩いてきましたが、職種は、事務員と図書館員のほぼふたつしか経験していません。
「図書館で働いています」と言うと、「うらやましい」「あこがれる」「クリエイティブ」「知的」などの反応があったりします。図書館員(司書)にはそういうパブリックイメージが多少あり、それをモチベーションやプライドにする従事者もいたりします。
不安定で、決して良いとは言えない雇用条件で働いている、要するに非正規の図書館員は存外に多いのですが、待遇や昇進という目に見える糧が少なければ、仕事の持つイメージとか、やり甲斐や達成感を、働く意味や自分の存在価値にしようとするのは自然の摂理だ、ぐらいに思います。
行政は、自らが長いスパンで責任を持って図書館員の人材を育成することを放棄する傾向にあり、公共図書館の多くは、民間に運営を任せる流れになっています。民間は当然利益を追求しますから(企業だからあたりまえ)、人件費はなるべく抑えようとし、しかも各方面から「任せてよかった」と言ってもらうために、地味な文献の保存などより、わかりやすいサービスに躍起になりがちです。
そこで「使える」のが、パブリックイメージや末端従事者の「本が好きだから」という気持ちです。雇用者側は、それに付け込んでいるとしか思えません。
目が回るように忙しくても、待遇を良くしなくても、図書館で働けるというだけでそこそこ人は集まります。そして文句も言わず、いい仕事をしようと頑張ります。徐々に疲弊し離脱して行く者がいたりしますが、それは想定内。代わりはいくらでもいます。だってクリエイティブな、よさげなイメージのお仕事だから。
悪循環です。
はたして図書館員は本当にイメージどおりの、自尊心をくすぐる仕事なのでしょうか。そもそも、全くクリエイティブじゃない、或いは、クリエイティブまみれの、お仕事なんて世の中にあるのでしょうか。
そう思う理由は、自分が今まで仕事を聞かれ「事務です」と言っても、一度もクリエイティブとか知的と言われたことがないものの、今振り返ってみると、事務員も図書館員も、自分の中でのクリエイティブ度(?)はほとんど変わらなかった事実に最近気づいたからです。
図書館利用者のためにわかりやすい掲示物を作ることと、定例会議のための資料のグラフの完成度を上げることって違うのでしょうか。多少の知識と経験値をよりどころに本を選ぶことはクリエイティブで、無駄のない日々のデータ入力や届いた郵便物の仕分けの効率化を模索することは非クリエイティブなのでしょうか。
人はイメージに踊らされるものですが、仕事の本質は、イメージのずっと奥にある気がします。どんな職種にしろ、目の前の仕事をごまかさずにやり続けることでしか入れない奥。…あ、「やり続ける」だって。自分で書いてて耳が痛いぞ。
「こぞって活躍しろ」「自分の確固たる居場所を作れ」「生きる意味を探せ」「価値のある仕事をしろ」…意外と危険な言葉だと思います。こういう言葉が功を奏する人は人生の糧にすればいいけれど、全員に当てはめる(当てはまる)言葉じゃない。そもそも、全員に当てはまる言葉なんてこの世にないし。
マジメな人ほど、この手の言葉に振り回されて、自分を卑下したり、他人の評価ならまだしも自己評価まで乱高下させて息苦しくなってしまう。そしていわゆる“やりがい搾取”の温床にもなる気がするのです。サービス残業なんて、やつらの思うツボだってば!
年齢を重ねるにつれ思うのは、仕事のやり甲斐に人生の価値や生きることの比重を置き過ぎると、仕事をしなくなること=自分の価値がなくなること、になって、ますます、加齢=忌むべきこと、になっちゃうのでは?という危惧です。
今、そんなことを考えながら、なにかと規制の多い学校司書という仕事で、「最後だから」という開き直りを発動させると、いったいどこまで好き勝手なことができるものだろうか、にチャレンジ中です。
最後と言えばそりゃもう「やり逃げ」に決まっています(?)。そうでもしなきゃ、働き続けてきた甲斐がない。やり甲斐ではなく、ただの甲斐。
どうやらそれが私の仕事に対する結論のようです。仕事なんて密かにふざけて最後は気持ちよくぶっ壊してナンボです。みなさん、なるべく気楽にいきましょう。
by月亭つまみ
◆木曜日のこの枠のラインナップ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが…】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
はしーば
やり逃げ上等!
つまみさんの言葉でスカッとしました!
潮時って本当にありますよね。
自分で決めてこそ、ですが。
明日から違う視野で景色が見られそうな気がしてきました。
おーし。
つまみ Post author
こんにちは、はしーばさん。
仕事に対しては、自分はダブルスタンダードなんじゃないか、と思ったりもするのですが、仕事との距離によって感じ方が変わったり、相反する気持ちが混在するのもふつうのことかな、と思って、ええいええい!と書いてしまいました。
「明日から違う視野で見られそうな気がしてきた」という、自分にとっては文章を書いた際の最上の言葉をいただいて、本当にうれしいです。
書くときも、読むときも、イチバンはそれなんです、私。
ありがとうございます!