◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第11回 今は 心にあの人が
見るからに頭が良くて、はしゃがずうろたえず口から泡など飛ばさず、その場の雰囲気に呑まれず、でも空気は乱さず、情緒が安定していて、多くを語らず、とはいえ言うべきことは言い、聞き上手で、節度もセンスも洗練も先見の明もあるのに謙虚で、あてこすらずやっかまず、批判されても平常心で、常にマイペースに見える人が…
苦手だ。
なぜなら、自分が、見るからにうすらぼんやりしていて、はしゃぎうろたえ口から泡を飛ばすほど興奮しがちで、その場の雰囲気に弱く、情緒は乱気流で、しばしば盛り気味に話し、でも言うべきことは言えず、興味がない話は聞いていないのがすぐにばれ、節度もセンスも洗練も先見の明もないのに傲慢で、あてこするわやっかむわで、批判されようものなら大騒ぎし、常に人のペースに左右されているからである。
ブレないポリシー(らしきもの)を持ち、どんな苦境に立たされても前向きなことを言ったり書いたりする聖人君子のような人を見かけると、反省する以前に、「嘘くさい」「そんなわけないだろ」と思う私は、間違いなく心が汚れている。
さらに言えば「こういう、陽の当たる場所が正しい場所だと信じて疑わない人たちが、自分のような日陰者(死語?)を生きづらく、息苦しくするのだ」とさえ思う。ホント、やなヤツだな、私。
やなヤツ道まっしぐらでさらにさらに開き直ると、意見の違う他者を「人それぞれだから」と一見尊重するように扱う人はたいてい冷酷無比だと思う。いや、冷酷無比でいいのだ。「何言ってんだ?こいつ」と思う相手にいちいち取り合わないのは、不愉快を回避し、ムダに人生を錯綜させないための最良の方法だと思うから。
でも、「人それぞれだから」と「バカをいちいち相手にしてられっかよ…知らんがな」はほぼ異音同義語なのに(極論!)、前者は人間ができて見え、後者は器量が狭いととられる。両者に違いがあるとしたら、冷酷さや無関心すら自己プロデュースにスライドさせる狡猾な能力があるか否かじゃないか。われながら本当に極論だけど。
世の中の、正しくないことやネガティブな物言いへの不寛容さが度を越している気がする。息苦しい。同時に、不寛容以前の「興味なし!」なのに、寛容を装う人も増殖中のように思う。
何かっていうと、謝罪会見とか降板とか謹慎…などという十三階段に人(や企業)を追いやる「民意」という圧力と、意見が違うと見るや、突如、脳内に設置した幻想のハシゴを上り、高みの見物のように達観をきどるのって、真逆ではなく、同類だと思ってしまう。自分を安全な場所に置いているという意味で。
自分の考えを述べる、何かを表現する…は当然として、ある種の空気感に加担することも、人を傷つけることはもちろん、自分が傷つくことをも覚悟してやるべきことだと思うのだ。
自分にできているかはどうかは別として、この3月に発売されたMOOK『いつも心に樹木希林』を読んだ今、なぜかそんなことを思って暮らしている。
真面目かっ。
by月亭つまみ
【木曜日のこの枠のラインナップ】
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊★切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
okosama
ここ『こういう、陽の当たる場所が正しい場所だと信じて疑わない人たちが、自分のような日陰者(死語?)を生きづらく、息苦しくするのだ』、やっかみ道ここに極まれり!笑
樹木希林本、あまりに話題になっているので敬遠していましたが、読んでみようと思います。あっ!まんまとおススメに乗ってしまった!
つまみ Post author
okosamaさん!
介護という、正誤の概念を語ることすら笑止千万な場所でアップアップしとりますよぉ。
介護が手ごわいのは、やっかみ道が発動しづらい、ある種の「明解な正誤論」で回っている世界だからかも。
介護者が下した決断を、周囲がどんなに肯定し、そもそも介護者に選択の余地がなかったとしても、その決断に誰よりも「正誤論」を当てはめてしまうのは、介護者自身なんですねえ。
たとえ、常日頃、「正しい場所なんてくそくらえ」とか言ってる輩でも(^^;)
あ、つい、いただいたコメントとは関係ないようなことを長々書いてしまいました。
樹木希林本、いっぱい出てますね。
ご本人はさぞや不本意かと。
okosama
ある種の「明解な正誤論」、分かります!思うところは色々お有りだとお察しいたしますが、まずはご自分の健康第一に!
私ごとですが、母の介護は後手後手に回ったので、88才の義母の介護は、近くにいる私の判断で、先手先手を取っています。しかし、義母は、まだそこまで人の世話になるほどではないと思っている節が…。食器棚に洗ってない食器がしまわれてますよ、お義母さん。
アメちゃん
ああ、樹木希林のムック本。
先日、以前勤めてた会社の社長から
「ハイ。これあげる」って頂きましたー。
あーー樹木希林、あまり好きじゃないんだよなーって思いながら
とりあえず、大好きな市原悦子さんとの対談と
最後の方のエッセイ(タロット占いの話)をちょっと読んで
「女のライセンス」という題のエッセイで
「子供を産んだことのない女ってのは・・・」
って行で、ぱたりと本を閉じましたよ。
私は、努力して頑張ることが正しいと信じてる人がニガテかなぁ。
自分自身が頑張って努力して、目標を達成してきたのを認めすぎるあまり
そうじゃない人、頑張らない(頑張れない)人やノンビリ生きてる人を
「努力が足らない。頑張るべき。」と言うのはね、ちがうよなぁって。
頑張ることが正しいと思われる社会も、息苦しいですよね。
つまみ Post author
okosamaさん、さぞや的確な先手必勝作戦を遂行なさっているのだろうなあ。
私は、実母の介護(とは言えない闘病中の付き添いと、それ以前の独居生活に対する自分の冷淡さ)に後悔しかないです。
だから義母は…ということではないのですが、70代で死んだ母親がもう20年生きていたら、こんなもんじゃなかっただろうなという視点でたまに義母を見ることがあって、自分で「だからなんだ?」と突っ込んだりしております。
つまみ Post author
アメちゃんさん、こんばんは。
そのエッセイ!私もその一行に「えっ!」と思ったひとりですが、続きを読んだらなんだか妙に納得してしまいました。
自分が正しいことをしてるとも言ってるとも思っていない、という前提で読むと、らしいなあと。
加藤登紀子さんとの対談で「妊婦がふんぞり返って歩くのを見るのが大嫌いだった」と言っていたりするのも含めて(^^;)
「努力が足りない。頑張るべき。」と強い目で言う人の前からは、そおっと、そおっと気づかれないように離れます。
自分がその人の視界からといなくなったと見るや、ダッシュして逃げます!?
kokomo
またまたつまみさんのおススメにのっかって、樹木さんのムック本を注文してしまいました。樹木さんの言葉、というよりは、橋本治さんとの対談が収録されているみたいなのでそちら狙いです。
連休中は仕事と子供達の送迎の合間に橋本治さんと鷺沢萠さんの著作を読むことにしました。読書は全然進んでいませんが。お二人とも故人となってしまいましたね。
つまみ Post author
kokomoさん、こんばんは。
おおっ!のっかってくださいましたか。
いと、うれしや(^O^)
橋本治さんとの対談、ホントに頂上決戦(なんの?)という感じがしました。
鷺沢萠さん、若くして亡くなってしまいましたね。
そんなにたくさんは読んでいませんが、文章も容姿も、繊細なイメージです。
故人と個人、同じ読みなのがなんだか意味深です。