【月刊★切実本屋】VOL.25 ほむほむの後継者は、いま話題のあのヒトだ
穂村弘のエッセイを読むたびに心がかき乱れ、動揺する。これって私だけなのだろうか。他の人は、彼の文章を読んでも冷静なのだろうか。
穂村弘の本を読んだことがあるという友達2名に取材したところ、見解は概ね以下だった。
「そりゃ、あの独特の自虐ネタ、齢50を過ぎて『夜中にベッドで菓子パンを食べるのが好き』と書ける勇気は魅力だと思うよ。言葉のセレクトに敏感で、さっすが歌人!だし、そうそう!と思うこともいっぱいあるし…。」
その面白さは十分「買って」いる、でも、心かき乱されるところまでは行っていない模様。両名とも、極めて冷静だった。当然か。
私の動揺はどこに由来するのだろうか。単純にファンだからか、嫉妬なのか、それとも、彼が自分のこととして、あたかも身を削る、抉る、かのように綴る「自分の言動に対して描く、他者の思惑のネガティブ予想図」が自分にもドンピシャ過ぎて狼狽えてしまうのか。それら全部が化学反応を起こすのか。
あ、こうして書き出したせいか、今、不意に理由の一端がわかった気がする。
「私は実に情けない、イケてない人間です」というカミングアウトを基盤に構築された世界が、芸…それも文筆業という芸で花開いたという事実、それが、努力やポジティブさを前面に謳ったものより私には数段面白く、なぜか盤石、かつ屈強に感じられることに、気持ちのどこかで折り合いがつかない戸惑いと、ちょっとした、ほんのちょっとした背徳感を覚えることが理由かもしれない。
昔から自分の根底に根強くあった「言霊ってやっぱりあるんじゃないか。ネガティブなことを言ったり書いたりすると、それに引っ張られるから、迂闊にそういうことを公言してはダメ」という、いわば言霊信仰心が揺れるのだ。それは「そんな言霊なんてないかも」という方向への揺れ方ではなく、言霊という概念すら煙幕、みたいな。
それと、穂村さんの文章には、ネガティブゆえの気楽さとかクスッとするような可笑しみや滋味、時にはちょっとした残忍さも滲み出て(私は「神経質な人は無神経」だとも思うので)、それはポジティブ方向からはうかがい知れない、人の深淵さも垣間見させてくれる気がする。それってすごい才能だと思うと同時に狡猾だとも思う。
そういうモロモロの複雑さ多様さを思って動揺するような気がする。
…長いよ、今、不意にわかったわりには。
絶望と真摯に向き合って、正しく生きようと正門から模索する哲学者、たとえば私の中では若松英輔さんのイメージと、正しく生きようとすることこそが絶望や孤独を招くとでも言いたげな偏屈教の教祖(?)中島義道センセーの哲学も、ネガティブな文言を回避していないところが自分にはすごく響いて、読むととても気が楽になる。けれど、クスッとはしない。
穂村さん…ほむほむの後継者というか同業者は、今話題の南海キャンディーズの山ちゃんじゃないだろうか、あらゆる意味で。
妬みや嫉みを主軸ネタにしている山ちゃんの今後を案じる声があるようだけれど、よけいなお世話だと思う。もし、山ちゃんが芸で迷ったら、誰か「穂村弘の本を読め」とアドバイスしてあげてほしい。
とっくに愛読してるような気もするけど。
by月亭つまみ
【木曜日のこの枠のラインナップ】
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊★切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
爽子
つまみさん。お暑うございまっす。
ほむほむさん、歌人なのですね。
ちょっと読んでみようと思います。
おススメの本はもちろん
歌の方も。
明日からお天気が悪くなるらしいのですが、大物は、オットのシーツくらい。
こちらは梅雨いりしたのかな?どうなんだろう
南海キャンディーズから、元気な頃のドカベンに、ドッカーーーン。^_^
ちょうど彼が高校野球で大活躍してた夏、ホームステイに来た女の子がタクシーで流れてた高校野球のラジオの中継で、アウト!と言うたびに、バカ受けしてたのを思い出したわ。
つまみ Post author
爽子さん、こんばんは~。
ぜひ、ほむほむワールドをご体験くださいませ(^^;)
そうそう。南海ホークスでまず浮かんだのがドカベン香川だったのですが、亡くなっていることをすっかり忘れて画像を選んでしまいました。
でも、まあいいよね。
もうドカベンのことも、南海ホークスを知らない人も多いかもしれないから、昭和平成の思い出ってことで。
そうか。「アウト!」にウケちゃうんですね。
想定外(^O^)
匿名
つまみさん
わたしもホムホム好きです💙
言葉のチョイスももちろん
わたしは、
ちょっと情けなくて
少女性が強くて
岡村靖幸の歌にでてくるような
男性視点が
たまらないんです。
匿名
すいません、青豆でした。
つまみ Post author
青豆さん、コメントありがとうございます。
おおっ!青豆さんもほむほむ派ですか。
少女性が強いって、わかります!
そして岡村靖幸!
今まで、ふたりを結んだことがありませんでしたが、曲、めきめきと聴いてみたくなりました。
そういえば、ほむほむと、ピン芸人でコントをやっているマツモトクラブ、似ていると思いませんか。
青豆
マツモトクラブとスリムクラブがごっちゃになってしました💦
たしかに、切り口感もしてますね。
山ちゃん然り
オネエを出さずに
嫌みなく、おもしろく、言葉で心をえぐることや芯を食うことを言えるのって
難しいですよね。
あ、でも、やや二人とも乙女感強いから、オネエ感はあるのか・・・
つまみ Post author
スリムクラブ!
久々に話題になったと思ったら…ですよねえ。
そういえば、今、人気の芸人って、どこか乙女感、オネエ感が(表面的なことだけじゃなく思考形態とかでも)ある人かもしれませんね。
侠気、みたいなものとオネエって、両極じゃないし、要するに、両性具有的要素の大きい人ってことか。
ふむふむ。
…あ、すみません。勝手に自己完結してしまった(^^;)