【月刊★切実本屋】VOL.45 本のソムリエをきどる
ZOOMウェビナー機能を使って開催された先日の《カイゴデトックスプレゼンツ「プロと話そう」》を視聴してくださったみなさま、ありがとうございました。非常に心苦しい音質ではありましたが、何人もの方から「楽しかった」と言っていただき、参加者一同ホッとしています。
今回のZOOMイベントには、サイトのデザイン、メンテナンスなどを一手に引き受けてくださっているWEBデザイナーのNaomiさんも参加されました。
Naomiさんは昨年の3月にお父様を亡くされました。そのときのことはご自身のブログの記事に書かれていますが、この一年は、少し離れた実家に頻繁に通いながら、独り暮らしになった80代のお母様のサポートをされています。
コロナ禍での移動、巨大クローゼットの処分、庭の手入れ‥などの物理的なこともさることながら、特に身につまされるのは、やはりお母様の精神ケア。長く連れ添った伴侶を亡くし、年齢のことも相まって、サポートを要するようになったお母様を案ずる生活は、多くのオバフォー世代にとって「自分自身の過去と現在と未来に重なる姿」だと思います。
そんなNaomiさんのお母様が「読書にハマった」と聞いたのは2か月前ぐらいのこと。
なんと麗しい!ステキ!!
Naomiさんからのメールになにげなく書かれていた「次に何を読んでもらおうか迷っている」という文章を見て、私は条件反射のように「はいはいはーい!私、選書したい!!」と手を挙げました。
今回はその経過?様子?をご紹介したいと思います。
まず私は、お母様の嗜好、最近の読書傾向、面白かった本は何か、を聞きました。これは、学校図書館でもよく聞かれる「なにか面白い本ないですか?」でも、とっかかりとして必ず最初にする質問です。ここからじゃないと始めることができません。そして、始まってしまえば、あとは転がるのみ!?
このNaomi&つまみのやりとりが、誰かの琴線に触れ、本人の本選び、または介護のサポートになればこんなにうれしいことはありません。※本のタイトルをクリックすると、Amazonの情報に飛びます。(シリーズものは第一作)
Naomiさん(以下、N):母は、佐藤愛子の『九十歳。何がめでたい』で読書にはまり出しました。その後、ご近所の友達に同じく佐藤愛子の『血脈』を上下刊お借りして一気読み。とても面白かったそうです。
少し上の世代の、たくましく生きる女性が良いのかなと思い、吉沢久子『100歳のほんとうの幸福』を買ったけど、これはそんなに響いてないみたい…。
それで色々と検索して、宮尾登美子も良いかなと思い(大河ドラマの篤姫も好きだったし)、『仁淀川』あたりはどうだ?と考えていたんですが、いかんせん、単行本が無いのです。文庫だとちょいと文字が小さいので、どうしようか悩み中…。
以下、私が思う母の好みです。
同年代やちょっと上の年代の女性のエッセイや自叙伝(母は昭和12年生まれです)歴史小説(よくドラマを見てます。歴史好きみたい。)懐かしい戦後の時代小説(戦時中の子供の頃も、よく東京まで行ったりしてたみたい。10代からは理容師免許取得のために、銀座にもよく出向いてたらしいです)文庫でも良いけど、文字が大きめのものがいい。
NGは、おどろおどろしい殺戮やお化けなどが出てくるものや、カタカナ語が多い、海外が舞台のもの。kindleも考えましたが、お友達と貸し借りできないとつまらないかと思案中。
つまみ(以下、T):『血脈』、私も面白かったです。久々に思い出して、同じ頃に出た『岬へ』(伊集院静/著) もとても面白かったことも芋づる式に思い出しました。これは『海峡』『春雷』に続く、三部作の三番目で、著者の自伝的小説です。
私は、時代小説は好きなのですが、史実を基調にした歴史小説はあまり読んでいなくて、読みやすくて面白かったと思い出せるのは、
『かたづの!』(中島京子/著)、
『火影に咲く』(木内昇/著)
あたりです。特に『火影に咲く』はすっごく良かった。木内昇は『よこまち余話』『浮世女房洒落日記』もいいですよ。
時代小説は、宮部みゆき、乙川優三郎、宇江佐真理、あたりは、外れなし、と思っていますが、単行本で調達できるものがあるかな。
大活字本というのがあるんですが、ご存知ですか。図書館では所蔵していると思います。一応、弱視の人向けになっていますが、高齢者にとってもありがたいものなので、私はよく義父母に借りました。宮部みゆきなどはたくさんあります。
今ちょっとNaomiさんが住んでいる自治体の図書館のHPを見てみましたが、大活字本、けっこう所蔵しているようです。
それと、本当は、飯嶋和一の時代小説全部、と言いたいところですが、読みやすくはないかなあ。
あとは、一見若者向けっぽいですが、
『かがみの孤城』『ツナグ』『ツナグ 想い人の心得』(以上、辻村深月/著)、
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/著)
も、中高年の私にもとても面白かったです。
他にも思いついた順に書くと、
『彼女の家計簿』(原田ひ香/著)、
『ひとつむぎの手』(知念実希人/著)、
「れんげ荘シリーズ」(群ようこ/著)、
『蒲公英草紙』(恩田陸/著)、
『夢見る帝国図書館』(中島京子/著)、
『なんにもうまくいかないわ』(平安寿子/著)などなど。
それと、いまさらな感じもしますが、さくらももこさんと群ようこさんはエッセイの名手だと思います。佐藤愛子がイケるなら、このふたりも、するするっと読めて、なおかつ爽快感があるという共通点でお薦めします。
以上、とりあえず、思いつくまま。また思い出したら書きます。
N:たくさんのリストアップ、ありがとう! 大活字本というのがあるのですね、知らなかったです。母にお奨めしていただいた『ナミヤ雑貨店』が面白くて、すっかり自分でハマってます。あと『火影に咲く』も買っちゃった。
これはまだ読んでないけど、楽しみなのです。最初のほうをチラ見して思い出しましたが、そう言えば歴史小説だったら、『雷電本記』(飯嶋和一/著)も単行本があれば母に良いかも、と。うん。やっぱり出会いだー!
T:有川浩の「三匹のおっさん」シリーズも、もし未読でしたらよかったらおかあさんの候補棚へ。三匹が盤石過ぎて予定調和だったりもするのですが、すっごく読みやすいし爽快感があります。
以下、Naomiさんにはまだお伝えしていない「お母様、これどうでしょう?」と思う小説です。
『旅屋おかえり』(原田マハ/著)、
「花咲小路商店街」シリーズ(小路幸也/著)、
「おれのおばさん」シリーズ(佐川光晴/著)、
『阿弥陀堂だより』(南木佳士/著)。
そしてそして、おまけ!
はらぷさんより
『ツリーハウス』(角田光代/著)。
by月亭つまみ