帰って来たゾロメ女の逆襲⑫ ~昇、浩、一樹、よしきについて。そして今回のセンターは昇、の巻~
「好きな作家は?」と聞かれると、最近は「木内昇さん」の名前を挙げることが多いです。
木内昇はキウチノボリと読みます。女性です。
言わずもがなだったらスミマセン。
以前からうっすら感じていたのですが、作家って他のジャンルより、名前だけでは性別がわからない人の比率が高くありませんか。
特に女性。
自分が1冊でも読んだことのある人限定でも、有川浩、桜庭一樹、柴田よしき、桐野夏生、山本文緒、恩田陸、栗田有起、碧野圭などなど、けっこういます。
特に、木内・有川・桜庭・柴田4名の名前は、「もしかして女性?」などとはまず疑ってかからない真性男性名詞(?)かと。
ある意味、反則!?
他にも、微妙になつかしい(失礼!)田口ランディ、しばらく回文だと思っていた原田マハ、庄司・栗本・高村・北村の男女入り乱れた薫カルテットなど、上に挙げたグループとは所属リーグが異なると思われる性別不詳名チームも存在します。(私が勝手に存在させただけだけど)。
以下は、上記の方々の名前がペンネームだという前提で考察しますが・・
性別での先入観や固定観念を排したいという作家の気持ちはわからないでもありません。
「小説」単体にとって、女性(あるいは男性)が書いた、という情報などいらないっちゃあいらない。
なんだかんだいって、性別不詳チームと、いかにも女子力が強そうな名前(私にとっては江國香織とか村上由佳とか山田詠美とか姫野カオルコとか)チームの書く小説は醸し出すものが違うような気がします。
後者はやっぱり恋愛小説が似合うイメージ。
ま、私のこのイメージこそ先入観や固定観念以外のなにものでもないわけですが、なんだかんだいって名前は顔の一部だし、作者名も読者にとっては小説を選ぶ際の重要な参考資料だと思います。
なので、「女性を前面に出す」「性別をうやむやにする」「反則行為すれすれの名前で営業する」はどれも作家の戦略としては正しいと思います。
戦略といってしまうとアレですが、変化球も正攻法、という感じでしょうか。
でも、ただそれだけではないのではないか、と最近思えてきました。
穿った見方であることを承知で書きますが
性別不詳名って、読み手に先入観を抱かせないプラス、自らになにかを課すため、かっこよくいうと作家としての矜持の表明という意味もあるのかもしれない、と。
そのなにかとは、性別を超越したその先のなにか。
でもジェンダー方面とは違う、なんていうかこう、守備範囲とか懐の広さに由来する度量みたいなもの。
そんな風に思うようになったのは、木内昇さんの『ある男』を読んだからだと思います。いや、読んだからです。
『ある男』は、それぞれ主人公が違う7つ入りの中編集で、共通項は舞台が明治維新であること、主人公が無名であること、です。
文字どおり、名前すら出て来ない「ある男」達の物語なのです。
歴史に名を残すことなく、大きなことなどなにひとつ成しえず、でも7人とも、欠落と過剰を持て余し空回りさせながらも圧倒的な存在感を示します。
その、とことん地味で、同時にぐいぐいこちらに迫ってくる激渋な世界は、女子力をちらつかせる名前の作家には到底描けない気がします。
・・・極論ですよ偏見ですよ、これこそKING OF 先入観&固定観念ですよ、女子力ちらつかせ小説も好きですよ(あわわわっ)。
でも、木内昇という名前がこの作家に及ぼした影響は少なくないのではないか、もっというと、木内昇名だから書けた世界なのではないか、と思ってしまったのです。
それほど『ある男』は私にとってはガツンと脳天を直撃される稀有な小説でした。
この「別冊」に植松眞人さん というメンバーが加わってひと月、その内容、表現方法に「やっぱ、男性は違うなあ」と思うことが多いです。
それは9割がた好意的な感慨だったりするのですが、残りは、上手くいえませんが、ちょっとした対抗意識的なもの、ハッとさせられて悔しかったりする部類の感情です。
もちろん、自分は自分の身の丈にあったものを書けばいいのだし、声高に性差について語るつもりはまったくないのですが、無意識に自分で自分の身の丈を狭めてないよね私、とあらためて検証したくなりました。
そういう意味で、植松さんと木内さんはすごく刺激的な存在です。
ちなみに、図書館で働いていたときに私はふざけた広報紙を作っていたのですが、そのときの自分のペンネームは内山手線(うちやまて・せん)でした。
くらもちふさこさんのあの!(あえて「あの」といってしまう!)名作マンガ『おしゃべり階段』の登場人物で、私の永遠の憧れであり続ける中山手線クンが出典ですが、今思うと性別不詳ペンネームだった!
ひゃっほー!!
by月亭つまみ
こんなブログをしています。正体不明な女二人のブログ。 お昼休みなぞにのぞいてみてください♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
sherry
「名前だけでは性別がわからない作家が多い」に同感です。
逆パターンですが,三崎 亜記をずっと男だと思っていました。
でも,そのことについてそれほど深く考えたことはなかったので,
l今回改めて,「な~るほど!」と納得。
でも,正直に言います。
一番反応してしまったのは.「あの名作マンガ『おしゃべり階段』」です。
青春真っ只中の私が,青春真っ只中の加南達の言動に,思いっきり共感できた名作でした!
ついでに,「いつもポケットにショパン」も忘れられない名作です♪
もう止まらなくなりそうなので,止めます(笑)
sherry
すみません。肝心なところを書き間違い。
「三崎 亜記をずっと女だと思っていた。」でした
三崎 亜記さんは,男性です。
つまみ Post author
sherryさん
コメントありがとうございます!
三崎亜記、男か女か話題になったことがあります。
えっ!?女性なんでしたっけ?
『おしゃべり階段』、名作ですよねですよね♡
共感できたー!おっしゃるとおり!
私も何十回読んだかわかりませんが、読むたびに「話も絵もセリフも私にとっては全て完璧!」
と思います。
毎回です。
実は、今回これを書いて、あらたにその思いを強くして
来週更新の<いろんな言葉>にも「おしゃべり階段」を選んでしまいました。
中島慶子さんがとってもステキなイラストを描いてくださいました。
期待して下さいまし~。
つまみ Post author
sherryさん
そうなんですよね。
わかっているのに、男女を書き間違っちゃったり
そのうちに、あれ?結局どっちだっけ?と思ったり。
これぞ性別不詳名の底力!