ピクルス生活
最近、私の冷蔵庫は、カラフルな小瓶でいっぱいだ。ビールやワインの入るスペースがない。わずかな隙間に葉物野菜をねじ込んで収めている。
小瓶の中身は、ピクルス!そう、私はピクルスづくりにはまっているのだ。
友人のお父さんが育てたムラサキタマネギはきれいなピンク色に仕上がった。黄色のズッキーニは輪切りにして漬けたら、まるでお星様のようなキュートな一品に。ゆで卵もピクルス液にドボンと浸してみた。白身部分に爽やかな味がしみ込んで、ビールや白ワインのあてに最高だ。
土曜日のランチタイムに放送しているラジオの収録番組で、ピクルスをつくって販売する30代の男性に出演して頂いている。地元農家から規格外の野菜を買い取り、ピクルスをつくり、きれいな瓶に詰めて販売する。透明な瓶の中で、白い蕪に赤や黄色のパプリカが映える。レモンスライスにきゅうりの緑のグラデーションが美しい。鷹の爪やローリエが気持ちよさそうに浮かんでいる。“ピクルス”という新たな価値付けをされた野菜達は、瓶の中でキラキラと輝いて見える。ギフトとしても人気で、県外からの注文が多いという。
企業秘密かと思いきや、彼は試行錯誤してつくったレシピをHPやフリーペーパーで公開している。煮沸殺菌や脱気の仕方も紹介している。だから番組でもピクルスの作り方を教えていただいた。
「商品をぱくられてしまうのでは?」と問うと、
「ああ、大丈夫ですよ」と返ってくる。
「ピクルスづくりのコツってあるんですか?」
「コツですか・・・?うーん、酢につければいいんです!」
「酢は何がいいんですか?」
「酢ならなんでもいいんですよ。自由でいいんです!」
なんだか大物の予感。最近ではピクルスと合わせて喫茶事業にも取り組み始めた。将来ビジネスが大きくなっても、きっと彼の原点は「地元の農家さんを助けたい。せっかくつくった野菜を、規格外という理由で破棄させたくない」という思いだ。
先日、「夏のはじめのワイン会」に、このお店のピクルスを持っていった。各自がワインに合うおつまみ一品と音楽CD一枚を持ち寄るというルールで、気のおけない仲間と何年も続けているワイン会である。
紙袋から縦長瓶に詰められたウズラ卵のピクルスを取り出すと、友人が
「あ、このお店のピクルス、気になってたの!」と叫んだ。
「ショッピングサイトでここのピクルス、上位に入ってたよ!」とも。
ブラックペッパーのきいたウズラ卵のピクルスをつまみながら、白ワインを楽しんだ。まろやかな優しい味わいのピクルスだった。大人気であっという間にお皿は空になった。
・・・というわけで、私はピクルスにはまってしまった。「ピクルスは自由だ!」という言葉を信じて、いろいろと試している。酢と砂糖と水と昆布またはローリエ、鷹の爪。お酢はアップルビネガーがお気に入り。この夏はサッパリ爽快、ピクルスで乗りきります!