優しい人:ささみのオーブン焼き
母が転院しました。
ある程度病状も落ち着いたところで希望していたリハビリ病院から受け入れ可能の連絡が入ったため、救急搬送された急性期病院から転院することになりました。
病院間の移動については、急性期病院のソーシャルワーカーさんが介護タクシーを手配してくださり、母をストレッチャーに乗せたまま約15分ほどを移動することになりました。
出発時間が近づくと、病室の前にストレッチャーを押して30代後半くらいの男性がやってきました。介護タクシーのドライバーさんです。私に挨拶をされた後、ベッドに寝ている母に自分の名前を名乗り、「新しい病院まで運転させていただきます。よろしくお願いします」と声を掛けました。それだけでふと、「ああこの人は信頼できる」と感じました。脳梗塞と認知症で、感じ取る力が著しく低下している母に対して、悪意はないものの少しおざなりな対応をする人もいないわけではありません。でも、このドライバーさんは、おそらく仕事の中で積み重ねて来たであろう配慮を自然に見せてくれました。
車に乗って移動し始めると、母は少し不安になったのか、絞り出すような声を上げ始めました。その声がちょっと大きめだったので止めようとした私は、思わず「もう少し静かにね、まさおさん」と言ってしまいました。
ペットと暮らしている方ならわかるかもしれませんが、自分にとって「小さい者」「守るべき存在」の名前が頭の中でごっちゃになってしまうことがあります。姪や甥の名前を呼ぼうとして猫の名前を呼んでしまうのです。
母に声を掛けようとして、飼い猫の名前を呼んでしまう。これは単純な言い間違えだけではなく、母が私の中で「小さくて守るべき存在」になったことを意味していました。
「あっ、まさおさんはうちの猫の名前で…」と言い訳をするかのように言った私に、ドライバーさんは「僕の母も、僕の子供たちをジェームス!って呼ぶことがありますよ。ジェームスは母の犬の名前なんですけどね。大切な存在の名前はごっちゃになっちゃうんですかねぇ」と笑いました。
やっぱりこの人は信頼してもいい人だ。
新しい病院の外周は、桜の木で囲まれていました。その時はまだ花は咲いていなかったけど、ドライバーさんは「これが一斉に咲くと本当にきれいですよ。桜が見える病室だといいですね」。
建物の中に入って、病院のストレッチャーが来るのを待っている間、簡単な手続きのために私が母のそばを離れたこともあったのですが、その間もドライバーさんは母から見える位置に立って時折声をかけてくれていました。
介護や看病というのはひどく大変で、時に無神経な人によって嫌な思いをさせられることもあります。でも、その一方で「この人、優しい」とうれしくなる瞬間も存外多いです。
もちろん、全て私一人でやっているなどと思う事はありませんが、それにしても私の介護生活には随分とたくさんの優しい手が添えられているのだなぁと痛切に思います。
果たして母がいる病室の窓からは、病院を取り囲む桜並木がきれいに見えます。ただ、母の病室は4階で、眼下に咲き誇っている桜を見るには窓際に立って見下ろさなければなりません。おそらく桜の花には間に合わないと思いますが、自分の力で立ち上がって、桜の葉の力強い緑を楽しむのも悪くはないと思いますよ、お母さん。
さて、今日ご紹介する一品は『ささみのオーブン焼き』です。ここ最近、自分の健康なんて二の次にして食べまくっていた私ですが、その自堕落の積み重ねが年老いた私の健康状態を左右するのだという至極当たり前のことに気付きました。”You are waht you eat.ーあなたはあなたの食べたものでできている”ですよね。というわけで、ヘルシー=ささみ&野菜という短絡的な発想で作ったのがこの一品です。
できれば「年相応よりちょっとヘルシー」くらいの路線でいけたらいいな。
ささみのオーブン焼き
- オーブンを210℃で余熱しておきます。
- ささみは縦に切れ目を入れて観音開きに開き、食べやすい大きさにそぎ切りにします。
- ブロッコリー(最近高すぎない?)、ズッキーニ、きのこ類などの野菜を、これまた食べやすい大きさにカットしておきます。写真のものは、しめじと舞茸を使っています。
- 耐熱の食器にオリーブ油を引いてささみを並べ、塩こしょうをします。
- 野菜をささみの上に並べます。
- 野菜の上からパスタ用のトマトソースをかけてまんべんなく広げ、更にその上に溶けるチーズをたっぷりかけます。
- 予熱できたオーブンに器を入れ、20分焼いたら出来上がりです。
ドライバーさん、「僕、この病院へのお送りが多いんです。もしかしたらまたここでお会いするかもしれませんね」と笑顔で帰って行かれました。また会えますように。
ミカスでした
nemu
こんばんは。
いよいよリハビリ病院ですね。
これからきっと見違えるようにお元気になられると思います。
まだまだ、先は長いと思いますが、ミカスさんも頑張ってくださいね。
ささみは、フライにして食べるだけだったので、是非使ってみたいです。
ホワイトソースとか出てくると、ちょっと面倒くさくなってしまいますが、トマトソースプラスチーズなら、頑張れそうです。
ことぶ
ドライバーさん、とっても優しい。
読んでいた私も優しい気持ちになりました。
母を在宅で介護していた時、何でもない優しさに感謝し、癒されたのを思い出しました。介護していると知らないうちに心がささくれ立つので、ドライバーさんみたいな優しさに触れると、びっくりするぐらい癒されますよね
ぶんぶん8
ミカスさん、こんにちは!
お母さま、希望のリハビリ病院に転院出来て良かったですね。
私も叔父の受診で介護タクシーにお世話になったことがあります。
叔父は内臓などは健康だったのですが、脊椎狭窄症で座ることも出来なくなっており、ストレッチャーで移動しなければなりませんでした。
そしてストレッチャーのまま受診しなければならず、その時は初めて行く病院に付き添う私も緊張しておりました。
そんなところに来てくれた介護タクシー。運転手さんは同年代の男性でした。
まず目に入ったのは彼の靴。
黒いスーツに黒い靴でしたがビジネスマンが履くような靴ではなく、きっとファッションが好きなんだろうなと感じさせかつどんな場所に行っても失礼でない形。
そしてメガネがとっても個性的で、メガネ好きとしてはちょっと見過ごせない感じでした。
終始明るく丁寧な物腰で、運転もとても丁寧でした。そして叔父のところからどれだけ見えたかわかりませんが、少し窓を開け風が入るようにしてくれて、今どこを通っていて何が見えるかを説明しながら走ってくれたのです。叔父はそれに対して反応はしませんでしたが、ただの病院に行く移動がちょっとしたドライブみたいな感じになりました。
結局それが叔父の最後のドライブでした。
その後救急車に乗るようなことはありましたが、風を感じながらゆっくり走ったのはそれが最後。
運転手さんはそういうことが分かっていていい思い出を作ってくださったんだなと後々までも心に残りました。
次は自分が運ばれて行く時まで介護タクシーには縁がなさそうなので、あの運転手さんにお会いする機会も全然ありません。
メガネやファッションのこと、これまでの人生のことなどお話してみたかったなと今でも時々思い出します。
「メガネ、お好きなんですか?」とだけ話しかけましたがただそれだけ。
あー、どんな人生を歩んできた方だったのだろう…。
母や叔父のことで動き回っていた日々、その時は夢中でよくわかりませんでしたが、普段だったら出会わない、優しい人にたくさん出会った日々でもありました。
ミカスさんは優しい運転手さんにこれからも会う機会があるといいですね。
ミカス Post author
nemuさん
返信が遅くなり申し訳ありません。
心強いお言葉ありがとうございます。
なんとかリハビリを頑張ってくれて、少しだも母が機能を取り戻してくれるといいのですが。
祈りつつ、母をサポートしていこうと思います。
レシピ、ぜひお試しください。
今は、ホワイトソースも出来上がっているものが売られていますから、ホワイトソースで作ってみるのもいいと思いますよ。
ミカス Post author
ことぶさん
返信が遅れてしまって申し訳ありません。
ドライバーさん、とても穏やかな方でした。
介護って心も体もすり減りますよね。その分、小さな親切や些細な言葉に救われるのも事実。
ことぶさんも頑張られましたね。
ミカス Post author
ぶんぶん8さん
返信がおそくなってしまいました。申し訳ありません。
介護タクシーのドライバーさん、たとえ短い時間でも、色々な方の色々な人生を垣間見るのでしょうね。もちろん元々のお人柄もあると思いますが、仕事での経験からも色々な形の気遣いを身に着けていらっしゃるのでしょうね。
それにしても、ぶんぶん8さんが出会ったドライバーさんの眼鏡やファッションが気になります。
これからも私たちが優しい人に出会えますように。そして私たちが優しい人でいられますように。