【月刊★切実本屋】VOL.89 YAいかがですか
昨年の大晦日、旧Twitterで、2024年一年間に読んだ中から印象的だった本を10冊挙げてみた。順位はなく読んだ順番で
夜明けを待つ/佐々涼子
わからない/岸本佐知子
愚か者の石/河﨑秋子
惣十郎浮世始末/木内昇
しぶとい十人の本屋/辻山良雄
死んだ山田と教室/金子玲介
ラジオご歓談/みうらじゅん・いとうせいこう
ボタニストの殺人/M.W.クレイヴン
ハケン!アニメ /辻村深月
全校生徒ラジオ /有沢佳映
である。
どれも、一言で書くと「読む前と読んだ後で、見える世界(の一部)が変わった本」だ。もうこの10冊を選んだだけで、自分の2024年の本の総括は終了!‥と思ったが、イーロン😷主宰の場の投稿の転載だけでこの聖なるサイト(!)の記事を終わらせるのは自分の良心とムダなサービス精神が納得しないので、YAというシバリでも挙げてみたい。(YAについては青文字をクリックして参考にしてください)
YAという言葉が世間にどの程度浸透しているのかはよくわからない。正直、わたしもちゃんと理解できているのかどうか心もとない‥というか、今、世の中のあらゆる概念が猛スピードで変化していると日々実感しているので、ジェンダー、多様性同様、ノーエイジフリー(もちろん造語)ともいえるYAも、解釈はどんどん変わり、なんなら解体されちゃうかも、と思ったりもしている。長年(大きな声では言いづらいが)児童書界隈全般に苦手意識があり、教育者でもYAの研究者でも支援団体所属でもないわたしがワイエーワイエーと連呼すること自体、ある種の解体かもしれない。
でも、ローティーンからハイティーンに特に響かせたい文学ジャンルを先人が括ったことに籠められた思いは、本の力を信じるということに集約される気がするし、すべての世代に向けての願いだとも思う。たまにうさんくさいけれどね‥と、よけいな一言をついつけ加えてしまうのはもはや自分の性(さが)だな。ごめん。
そんなこんなで、属性外からの参入けっこうじゃないか、と誰も言わないので自分で言ってみる。われながら「肯定派なのか懐疑的なのかどっちなんだ?」だけれど、そんな混沌とした、ひとつだけの正解など導き出せない世の中だからこそ、十分おとなのみなさん!YA、いかがですか。
ってことで、2024年読了の本の中から、YAとして浮かんだ印象的な本を、読んだ順、数テキトーに挙げてみる。
博物館の少女 怪異研究事始め/富安陽子
博物館の少女 騒がしい幽霊/富安陽子
この夏の星を見る /辻村深月
成瀬は天下を取りにいく/宮島三奈
死んだ山田と教室 /金子玲介
ハケンアニメ!/辻村深月
自由研究には向かない殺人/ホリー・ジャクソン
キノトリ/カナイ: 流され者のラジオ/長谷川まりる
呼人は旅をする/長谷川まりる
地雷グリコ/青崎有吾
さやかに星はきらめき/村山早紀
全校生徒ラジオ/有沢佳映
ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐1/田中啓文
ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐2/田中啓文
不思議カフェNEKOMIMI/村山早紀
上記の15冊は、自分の中に今も棲みついている十代が感応した本であり、リアルタイムのオバ還の心にもヒットし、若いひとに「おもしろいよー」と薦めたい本だ。どんなおとなにも十代は棲みついているはずなので、要するに全方位へのお薦め。YAだからって侮るなよ。侮ったりしないだろうけど。
ひとつずつの感想を書くと際限なく続いてしまいそうなので、著者について思うことを書いて、新年のごあいさつとさせていただきます。2025年も【月刊★切実本屋】をよろしくお願いいたします。
●富安陽子は進化している 自分と同世代の進化は心を躍らせ、震わせ、高まらせる。読みやすいのに深い。児童文学の大御所は停滞していない。
●辻村深月は見えている なにを書いてもこっちの心を鷲掴みにする。脳内を見透かされている気がする。癪である。
●宮島三奈は持っている 成瀬の席巻はそうとしか思えない。いっそずっと持ち続けてほしい。
●金子玲介は憑いている この怒涛の刊行ラッシュ。しかも新人。憑いてなきゃおかしいだろう。次は自分の月並みな本名が来るんじゃないかと期待している。
●ホリー・ジャクソンは信じている この人の作品ほど順番に読まなきゃダメなものもない。このシリーズ、2作目で1作目の犯人がおもいっきりバラされてる。後日談付きという。読者を信じなきゃできない狼藉!?
●長谷川まりるは化けかけている いずれ誰もが知る作家になる!と断言してみる。
●青崎有吾は狙っている 正直、ゲームに理解できない箇所があって、わたしってバカなの?と思ったが、世間は大絶賛。素晴らしい着眼点。
●村山早紀は続けている 甘くて優し気でまろやかなので、幻惑され、なんなら高を括りそうになるが、一貫して「ひとの心にある善しか平和をもたらさない」と言い続けている。優しさは強さだ。
●有沢佳映は願っている 願えば叶う、のではなく、願うこと自体が成就なのかも。
●田中啓文はどうかしている 荒唐無稽、んなことあるかいっ!おいおいっ!の展開の連続。そして自分も楽器に手を染めたくなる胸アツでピュアな音楽描写。どうかしてないわけがない。
by月亭つまみ