ゾロメ女の逆襲

◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第53回  ごきげんななめはまっすぐに…ってか

自分が「この人、感じがいいな」と好感を持つ人は、たいていの人に対して感じがいい。なので、自分に向けられた感じのよさは、その人が自分に好感を持ったから、とイコールではない。わかっている。小学生じゃあるまいし。

でも、そんな人が、自分以外の相手に感じのよい対応をしているのをたまたま見たりしたとき、ほらね、やっぱりこの人はステキな人だ、と我が意を得て誇らしく思う…ときもあれば、そっかー、誰に対しても感じがいいんだなあ、そりゃそうだよね、わたしにだけじゃないよわかってたよ、とやっかむような、残念なような、若干しょんぼりするような場合も、まれにある。

このちがいはなんだ?妙齢の分際(!)で、やっかむとか、しょんぼりとか、しょーもないことを考えるのはわたしだけか?

仕事先の中学校に、感じのいい図書委員の女子がいる。二年生。女子の大半が束ねたロングヘアのなか、彼女は清潔感のあるショートヘアで、マスクの上から覗く、大きすぎず、さりとて小さくない瞳は、こちらが照れるほどまっすぐでキラッとしていて、まるで元・能年玲奈さんだ。そこに、雲と泥ほどある年齢差も軽く飛び越えるフラットな態度と、お茶目ながらも率直な物言いが加味されて、自分が同級生だったら友達になりたいだろうなと思う。

お昼休みに、図書委員会担当の先生が当番の図書委員たち(全員二年生)に意見を求めた。卒業生が来年度の新入生のために本の紹介カードを作成することになったのだが
①コメントが五行ぐらい書ける大きいタイプ
②タイトルとキャッチコピーを書くぐらいの小さめのタイプ
の二種類の花びら型のカードの「どっちがいいと思う?」と聞いたのだ。

男子ふたりは②と即答。「やっぱりそうなるか。新入生に本への思いを残してもらいたいんだけど、①だとハードルが高いって感じ?」と聞く先生に、頷く中二男子。

くだんの能年ちゃん似の彼女は「う~ん」と言ったまま、なかなか答えない。わたしが作った試作品のカードを真剣なまなざしで見比べている。先生は「実はいちばん意見を聞きたいのはあなたなんだよねー」という態度を隠さず、そこには①への期待も感じられる。男子の立場は?当て馬か。

しばらくすると、彼女は言った。「わたしも②がいいと思います。卒業生と新入生は会えないわけですよね。それって、書く方ももらう方もイメージしづらい気がするので、長い文章って難しいと思います。でも、長い文章で書きたいって人もいるかもしれないから、両方渡して、好きな方を選んでもらうのはどうでしょう」。

完璧。その路線で行くことになった。

この一連のやりとりで、彼女がただ「感じのいい中二女子」ではなく、クレバーで意志が強いことがわかった。先生の「ここで①という意見も欲しい」という圧を彼女が感じていなかったとは思えない。それも踏まえてのあのコメント。締めは気遣いの折衝案。折衝案って、大人はわりとすぐ思いつきがちだが、中学生には案外出ない。「正しいものをひとつ選べ」と常日頃、テストで問われているからかもしれない。

毅然とした彼女を見て思った。慇懃無礼感のない感じのよさのその奥に、もっと深い魅力がありそうな存在は、人にあこがれに似た執着心を抱かせるのかもしれない、と。執着心という言葉が強すぎるとしたらファン心理。ファンの気持ちはデリケートだったりするので、その人が評価されることを誇らしく思う反面、他の人に共有されると、少しやっかんだり、若干しょんぼりしたりするのかも。インディーズ時代からファンだったバンドがメジャーデビューしたときの気持ち、というベタな比喩は、どストレートで的を射ていると思う。

そう。わたしは能年ちゃん似の彼女のファンなのだ。昼休みに彼女に会えるとちょっとうれしいし、なにかの拍子に話が盛り上がるとウキウキする。お昼休みはウキウキWatching。あー、自分で言うのもナンだが、瑞々しいな、わたし。学校勤務はモイスチャー効果あり、かも。

by月亭つまみ

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